研究課題
基盤研究(B)
環境化学物質による甲状腺ホルモン(TH)のシグナル伝達経路への修飾作用を,in silicoから行動解析までを用いて調べた。用いる予定だった水酸化PCBが処理の問題から使用できなくなりイソフラボン,PFOS,ガドリニウム造影剤などを用いた。イソフラボンはTH受容体およびエストロゲン受容体などのクロストークにより作用し,神経突起進展やアストロサイト移動を修飾した,PFOSは曝露で種々の行動異常を生じ,TH標的細胞のプルキンエ細胞の長期抑制を抑制した。ガドリニウム造影剤はイソフラボンと同様に複数の受容体のクロストークを介し,特にTH膜受容体であるインテグリンαvβ3のシグナル伝達系をかく乱した。
環境生理学,毒性学
低用量で毒性を発揮する環境化学物質の多くはホルモン受容体に作用し,ホルモン作用を修飾することがわかっている。特に,発達期中枢神経系への曝露により非可逆的な脳発達障害が生じることがわかっているが,作用機構は明らかではない。そこで本研究では分子レベルから行動レベルまで多段階の試験系を用いて,体系的に作用機構を明らかにすることを目指した。本研究により環境化学物質の毒性発現メカニズムが明らかになり,それを社会に向けて発信することで,環境化学物質に対する注意意識の向上が図れるとともに,新たな予防対策の発案にもつながることが期待される。