研究課題/領域番号 |
18H03382
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅彦 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20256390)
|
研究分担者 |
李 辰竜 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80581280)
徳本 真紀 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (90614339)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カドミウム / 腎毒性 / 感受性因子 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度の研究で同定した5種(Thy-1BP、Surf-2、MEF-1、RAR/DR-5、USF-1)のカドミウム(Cd)感受性候補転写因子のうち、MEF-1およびRAR/DR-5について、Cd感受性に及ぼす影響をヒト由来腎近位尿細管細胞(HK-2細胞)を用いて検討した。 MEF-1は、ATP binding cassette (ABC) 多剤排出トランスポーターの1つであるABCB1(ABC transporter subfamily B member 1) [MDR1やP-糖タンパク質とも呼ばれる]の発現を制御することが知られている。そこで、ABCB1をsiRNA法によりノックダウンしたHK-2細胞を用いて、Cdに対する感受性を調べたところ、ABCB1のノックダウンはCd毒性に影響を与えないことが判明した。次に、CdによるHK-2細胞でのABCB1の発現変動を検討したところ、CdによってABCB1 mRNAレベルが増加するとともにABCB1タンパク質レベルも上昇することが明らかとなった。以上の結果より、ABCB1はCdに対する感受性決定因子ではないことが確認されたが、CdによってABCB1の発現が増加することが見いだされたことから、Cdが近位尿細管細胞における物質輸送に何らかの異常を引き起こす可能性が示された。 RAR/DR-5(別名:RARβ)の阻害剤であるLE135を用いてCd感受性に及ぼす影響を調べたところ、50 μM Cdで24時間処理したHK-2細胞では、およそ80%が細胞死を引き起こしたが、LE135の前処理によってほぼ100%の細胞が生存した。なお、Cd処理によってRARB mRNAレベルの変動は認められなかった。以上の結果より、RARβは、Cd処理による細胞内レベルの変動はないものの、Cdの感受性に深く関与する転写因子であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、カドミウム長期曝露マウスやヒト由来腎近位尿細管細胞を用いて、カドミウムの腎近位尿細管障害に対する新たな感受性決定因子を同定し、その分子メカニズムを明らかにすることを目的としており、以下の研究を計画している。 1) カドミウム曝露マウスの腎臓における活性変動転写因子の同定、 2)ヒト由来の腎近位尿細管細胞における活性変動転写因子およびその下流因子の同定、 3) カドミウムによる腎近位尿細管障害に対する新たな感受性決定因子の役割の解明 本年度は、昨年度の研究で同定した5種(Thy-1BP、Surf-2、MEF-1、RAR/DR-5、USF-1)のカドミウム感受性候補転写因子のうち、MEF-1およびRAR/DR-5(別名:RARβ)について、カドミウム感受性に及ぼす影響をヒト由来腎近位尿細管細胞(HK-2細胞)を用いて検討したところ、RARβがカドミウムの感受性に深く関与する新たな転写因子であることが示された。したがって、カドミウムによる腎近位尿細管障害に対する感受性決定因子を新たに見いだすことができ、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、カドミウム長期曝露マウスやヒト由来腎近位尿細管細胞(HK-2細胞)を用いて、カドミウムの腎近位尿細管障害に対する新たな感受性決定因子を同定し、その分子メカニズムを明らかにすることを目的としており、最終年度も当初予定していた研究計画通りに進めて行く。 本年度までに、カドミウム感受性候補転写因子を5種同定し、そのうちのRAR/DR-5(別名:RARβ)がカドミウム感受性に深く関与する転写因子であることを新たに見いだすことができた。 最終年度は、研究計画通り、『2)ヒト由来の腎近位尿細管細胞における活性変動転写因子およびその下流因子の同定』を達成するために、昨年度の研究で得られた5種(Thy-1BP、Surf-2、MEF-1、RAR/DR-5、USF-1)のカドミウム感受性候補転写因子のうち、残りのThy-1BP、Surf-2、USF-1について、カドミウムの感受性を調べるとともに、カドミウム感受性に関与する下流因子の同定を行う。 また、これらの研究成果を基に、カドミウムの腎近位尿細管機能障害に対する感受性決定因子の詳細な役割をカドミウム長期曝露マウスやヒト由来腎近位尿細管細胞を用いて解析する。
|