研究課題
氷雲の形成を促す「氷晶核(氷核活性を持つ粒子)」の発生源は不明であり,その粒子密度は気候変動予測での不確定因子となる。その為,近年,分析・観測技術の向上に伴い検出可能となった大気浮遊微生物(バイオエアロゾル)の氷核活性へ学術的関心が集まっている。申請者らは,長年の飛行機観測などで,高度数千mの粒子から氷核活性を持つ微生物(約50種)を検出しており,その種類から森林由来であると推察してきた。しかし,微生物の森林からの放出量は定かでなく,氷晶核の主要発生源とは断定できない。そこで,本研究では,観測機器を完備した森林観測サイトでの地上観測に,微生物捕集に特化した高高度大気観測を併用することで,森林地表から高高度までの浮遊微生物の鉛直分布を明かとし,氷核活性微生物の森林からの放出量を追究しつつある。2021年度は,森林バイオエアロゾルの捕集する観測調査を,茨城県筑波実験植物園において実施した。大気微生物が増える時期(8月と1月)に,筑波実験植物園において,ヘリコプターと建物屋上を利用し,それぞれ高度500mと20m(樹冠)で大気粒子を捕集した。従来の結果と同様に,真菌の胞子が樹冠上まで浮遊し垂直分布していることを改め確認した。また,大気粒子試料から,真菌と細菌が5種程度分離培養され,高い氷核活性を持つ株も確認され,カビやキノコの胞子が樹冠外に放出され雲形成に関わっている可能性が高まった。一方,この3年間に採取した大気粒子試料から直接抽出した微生物のゲノムDNA(培養を経ない)を解析した結果,森林内外を浮遊する細菌と真菌は数百種以上で構成され,季節によって森林内外の垂直混合の程度が異なる現象を確認した。こうした風送微生物に関する研究成果は話題性があり,書籍「大気微生物の世界:牧輝弥著」にまとめられている。また,一般市民からの注目も熱く,国際放送番組(NHKワールド サイエンスビュー)に二年にわたり放送された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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