研究課題/領域番号 |
18H03387
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
竹内 一郎 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (30212020)
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研究分担者 |
高山 弘太郎 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (40380266)
山城 秀之 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80341676)
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90403857)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サンゴ / 高水温 / 環境化学物質 / 毒性評価 / 分子生物学的解析 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、下記の1.~3.の実験等を実施した。 1. ミドリイシ属サンゴの毒性実験方法の開発 ミドリイシ属サンゴ等の枝状サンゴに適した毒性実験方法の開発等を行った。すなわち、ミドリイシ属サンゴの同一の箇所へのクロロフィル蛍光測定装置による光合成活性の測定方法を専用のホルダー等を用いて確立したほか、紫外線(UV)硬化性樹脂やUVライト等を使用したサンゴのポリカーボネート製ボルトへの新たな接着方法を開発した。 2. ミドリイシ属サンゴ主要種の温度耐性の解明 沖縄県瀬底島周辺の沿岸域からミドリイシ属サンゴを採集し、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設の陸上水槽にて馴致飼育後、愛媛県松山市の愛媛大学大学院農学研究科の実験室に輸送し、実験に供した。インキュベータ、LEDライト、小型シャーレ等を用い29から32℃の間で4温度区を設定し、1週間の飼育実験を実施し、その間のサンゴの体色や光合成活性を測定した。その結果、コユビミドリイシ等は、32℃区では白化するものの、29℃~30℃では体色および光合成収率は変動しないこと等が明らかになった。 3. サンゴと共生藻の熱ショックタンパク質遺伝子の塩基配列の決定 ウスエダミドリイシからtotal RNAおよびmRNA試料を抽出・精製し、逆転写酵素によりcDNAを合成後、各生物種のHSP cDNA配列の保存領域から設計・合成したプライマーとポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりDNA増幅およびシーケンスを行った。その結果、ウスエダミドリイシのHSP70 cDNAの部分配列を得ることができた。共生藻については、既報と同じHSP90およびHSP70 cDNAの配列があることが確認された。また、これらHSP遺伝子に特異的なプライマーとSYBR Greenを用いた定量的リアルタイムPCR測定系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、当初、1. ミドリイシ属サンゴの実験方法の開発、2. ミドリイシ属サンゴ主要種の温度耐性の解明、3、サンゴと共生藻の熱ショックタンパク質遺伝子の塩基配列の決定を計画していた。 そのうちの、「1. ミドリイシ属サンゴの実験方法の開発」と「2. ミドリイシ属サンゴ主要種の温度耐性の解明」は、ほぼ、予定通りの成果を挙げることができた。 また、「3、サンゴと共生藻の熱ショックタンパク質遺伝子の塩基配列の決定」に関しては、ウスエダミドリイシのHSP70 cDNAの部分配列を得ることができたほか、共生藻の既報のHSP90およびHSP70 cDNAの配列を確認し、HSP遺伝子に特異的なプライマーとSYBR Greenを用いた定量的リアルタイムPCR測定系を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進歩状況」に記載したように、本研究はおおむね順調に進展している。 今後の2年間は、当初の研究計画に記載した、1) ミドリイシ属サンゴの熱ショックタンパク質遺伝子の塩基配列の決定、2)ミドリイシ属サンゴ主要種の高水温曝露によるサンゴ白化過程の解明、3)ミドリイシ属サンゴ主要種の化学物質曝露によるサンゴ白化過程の解明、4)高水温と化学物質のサンゴ白化に対する複合影響の解明等の研究を実施する予定である。 また、研究成果の社会・国民への早急な還元をめざし、学会発表や海洋環境科学関連の国際誌への論文投稿を早急に行う他、本研究成果の関する公開シンポジウムの開催を予定している。
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