研究課題/領域番号 |
18H03391
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡村 秀雄 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (90253020)
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研究分担者 |
川井 浩史 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (30161269)
乾 秀之 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (90314509)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 防汚剤 / 銅 / 無影響濃度 / RNA-seq / 誘導発現遺伝子 |
研究実績の概要 |
課題①については、海藻類の現存量を経時的に測定するために、マイクロプレートリーダー(コロナ社製MTP-900Lab)を用いた方法を最適化した。その後、24穴マイクロプレートで増殖させた海藻類の現存量を、蛍光量として測定するための方法を最適化した。次に、海藻類の増殖特性を把握するために、シオミドロKU-1372株を均質化するために切断し、藻体の大きさ、藻体密度、培地、藻体の切断方法などによる影響を調べた。切断した藻体を数種類のフィルターでろ過して、種々の大きさの藻体を調製して増殖の違いを調べた結果、500um以下の大きさの藻体の増殖率が高かった。硫酸銅を供試して数種類の培地で増殖試験を行ったところ、培地中の有機物濃度が低い方が感受性が高かったので、以後の実験では人工海水に栄養塩類を添加した有機物フリーの完全合成培地を用いた。初期藻体濃度はChl-a量として9~17 ug/lが最適であった。藻体はホモジナイザーによる断片化よりも、カッターによる切断の方が高い増殖速度を示した。以上の結果をもとにマイクロプレートを用いた標準的な海藻類増殖阻害試験の方法を決定した。 課題②については、シオミドロを培養する人工海水に生育に影響の出ない最大濃度の銅を添加し、約1ヶ月間培養した。培養後、シオミドロから総RNAを抽出し、RNA-seq受託解析に供した。4000万リードから18413 遺伝子の発現が確認され、銅処理により発現が2倍以上上昇した遺伝子は495種あり、また2分の1以下に低下した遺伝子は358種類あった。発現量が多く、さらに発現変化の大きい遺伝子をそれぞれ5種選抜した。発現上昇した遺伝子には、光合成関連遺伝子が複数含まれていた。一方、発現が減少した遺伝子には銅トランスポーターなどが含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
①については、海藻類50種類程度を供試して、初年度にほぼ確立した海藻類増殖阻害試験により防汚剤(銅、ジウロン、シブトリンなど)の有害性を評価し、無影響濃度、50%影響濃度を算出する。これら海藻類への有害性を、甲殻類や魚類などの水生生物に対する有害性の文献値と比較することにより種の感受性分布解析を行い、環境生物の中での海藻類の感受性を比較する。 ②については、銅処理により発現変動が大きかった遺伝子についてプライマーを合成し、定量RT-PCRにより遺伝子発現の変化を確認する。さらに、除草剤ジウロンを処理したシオミドロにおける遺伝子発現変動をRNA-seqにより解析する。ジウロン処理により発現変動が大きかった遺伝子について同様に、定量RT-PCRにより遺伝子発現の変化を確認する。
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