研究課題/領域番号 |
18H03398
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
竹下 健二 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (80282870)
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研究分担者 |
尾上 順 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50241245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 除染 / 汚染土壌 / 福島第一原子力発電所事故 / 粘土鉱物 / 放射性セシウム / イオン交換 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
回分式水熱装置にCsを吸着したVermiculitized Biotite(VB) 2g と0.1M MgCl2 水溶液200mlを入れ、250℃、4MPaの条件下でCs脱離率の時間変化を測定した。その結果からイオン交換過程の速度係数(総括物質移動係数)を評価できた。 次いでカラムによるCsの連続回収実験を行った。のCs吸着VB 0.5g をカラムに充填し、250℃、4MPa の条件で0.1MMgCl2水溶液を 0.5ml/min で流し、Cs回収試験を行った。カラムからの流出液中のCs濃度を測定し、Cs脱離率の変化を調べたところ最終的にすべてのCsを回収することに成功した。処理前後のVBに対してX線回折分析を行ったところ、VBに吸着された Cs+ が全て Mg2+ に置換されたことを確認できた。 MD シミュレーションによる亜臨界水中におけるVB-水間の固液界面での原子・分子レベルでのイオン交換過程の動的変化を解析した。固液界面でのイオン交換挙動をMD シミュレーションにより模擬し、交換過程を解析した。その結果、常温常圧下では、Cs+ 取り込まれた層は、10.5-11.5 A 程度まで収縮し、安定的に固定化されることが分かった。また、固液界面に注目すると、Csを含む層の界面が閉じており、界面近傍での Cs+ と水分子の出入りは活発には起こらないことが示唆された。一方で、亜臨界水下では、層間の Mg2+、水分子、さらにはそれらが結合した Mg(H2O)6 2+ 錯体が層間を押し広げることで Cs+ は層内をランダムウォークによって拡散することが示唆された。常温常圧と亜臨界水条件で拡散係数を比較すると、拡散係数は亜臨界水条件下で 5-10 倍程度大きくなり、層間吸着している Cs+ がランダムウォークによってMg2+ と交換して脱着しやすくなることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の提案書で挙げている5つの課題 [①実汚染土壌を篩分けした細粒分(<75μm)を準備し、回分式亜臨界接触装置及び小型カラム試験装置を用いてイオン交換平衡・速度、Cs連続脱離を測定する。②XRD用の高温高圧セルを用いて、亜臨界水条件のイオン交換平衡における汚染土壌の分級細粒物の層間距離を測定し、層間距離から金属イオンの存在状態を解析する。③土壌細粒物のイオン交換挙動(平衡、速度)を支配している土壌構成成分及びプロセス操作条件を明らかにする。④MDシミュレーションによる水熱条件下における固液界面での原子・分子レベルでのイオン交換過程の動的変化を解析する。固液界面でのイオン交換挙動をMDシミュレーションにより模擬し、交換過程を解析する。⑤第一原理計算による層間に取り込まれた水分子およびその他のイオンや分子の化学状態を解析する。粘土鉱物層間に取り込まれた水分子やイオンの電子状態を解析する。]について、研究概要に示す通り、ほぼ研究目標を達成している。計画通りに順調に進めていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は申請書に従い、以下の3つの研究項目を進める。 ① 理論計算と分光/構造解析実験結果の解析による高速イオン交換過程の原子・分子レベルで解明する。1,2年目の計算および実験結果を基に、イオン交換反応を原子・分子レベルで解明する。 ② これまでの成果を総合化し、粘土鉱物の亜臨界水条件におけるイオン交換理論(平衡論、速度論)を展開する。 ③ 実機規模の「亜臨界水イオン交換プロセス」を想定し、構築された亜臨海水イオン交換理論を利用して、物質・エネルギー・放射能の各収支を評価して、必要なプロセスの規模、二次廃棄物発生量、処理土壌の再利用性を評価する。
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