研究課題/領域番号 |
18H03402
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
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研究分担者 |
永長 久寛 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (90356593)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フッ素 / ポリマー / イオン液体 / 分解 / 廃棄物処理 / 亜臨界水 / 再資源化 |
研究実績の概要 |
本研究は二次電池をはじめとするエネルギーデバイス等において、難燃性や耐薬品性に優れた材料として導入が進む一方で、廃棄物の分解処理方法が確立されていない先端フッ素材料、すなわち熱可塑性フッ素ポリマーおよびフッ素系イオン液体を、比較的低温(200~250 ℃)の亜臨界水中で、共存させた金属酸化物が分解して発生する酸化力あるいは還元力を持つ金属化学種を活性種としてフッ化物イオンまで完全分解し、さらに得られたフッ化物イオンにカルシウム源を作用させてフッ化カルシウム(人工蛍石)を得ることを目的としている。30年度は熱可塑性フッ素ポリマーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF、-(CH2CF2)n-)を対象にして過マンガン酸カリウム(KMnO4)を添加した反応系を検討した。その結果、PVDF中のフッ素原子あるいは炭素原子の物質量に対し、1.6倍量のKMnO4を共存させて亜臨界水中で反応させた場合、250 ℃という亜臨界水としては比較的低温でフッ化物イオン(F-)を100%の収率で得ることができ、同時に全有機炭素量の残存率は2%となった。従ってPVDFを事実上完全に無機化することに成功した。この場合、MnO4-イオンは反応の初期段階で二酸化マンガン(MnO2)に還元されることも分かった。さらに代表的なフッ素系イオン液体である[Me3PrN][(CF3SO2)2N]についてもKMnO4を添加した亜臨界水中で反応させた。その結果、300 ℃でF-の収率は97%に達した一方で残存する全有機炭素量は検出限界以下となった。従ってこのイオン液体もほぼ完全に無機化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フッ素ポリマーPVDFおよびフッ素系イオン液体[Me3PrN][(CF3SO2)2N]について過マンガン酸カリウムを用いることでほとんど完全な無機化を達成したため、研究は順調に進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
フッ素ポリマーについてはフッ化ビニリデン(VDF)と他のモノマーとの共重合体、すなわちVDF-ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびVDF-パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体を対象に過マンガン酸カリウムを用いた亜臨界水分解を行い、PVDFと同様な分解・無機化反応が進行するか調べる。さらにフッ素系イオン液体についても[C3mpip][(CF3SO2)2N] (C3mpip = 1-methyl-1-propyl-piperidium ion)を対象に反応を行ない、[Me3PrN][(CF3SO2)2N]の場合と比較することで反応に及ぼす陽イオン部分の影響を解明する。また、LCMS測定等を実施してこれらの反応における中間生成物を解明する。
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