研究実績の概要 |
本研究は二次電池をはじめとするエネルギーデバイス等において、難燃性や耐薬品性に優れた材料として導入が進む一方で、廃棄物の分解処理方法が確立されていない先端フッ素材料、すなわちポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような熱可塑性フッ素ポリマーや、フッ素系イオン液体、および関連した難分解性有機フッ素化合物を、比較的低温の亜臨界水中で、共存させた金属酸化物が分解して発生する酸化力あるいは還元力を持つ金属化学種を活性種としてフッ化物イオンまで完全分解し、さらに得られたフッ化物イオンにカルシウム源を作用させてフッ化カルシウム(人工蛍石)を得ることを目的としている。 令和2年度及び繰り越しした令和3年度は、エネルギーデバイス用の電解質として使用されるフッ素系イオン液体である[Me3PrN][(CF3SO2)2N]、[C3mpip][(CF3SO2)2N] (C3mpip = 1-methyl-1-propylpiperidium) や、C6F13末端基を持つ2H,3H,3H,5H,5H,6H,6H-4-thia-perfluoro(2-methyl)-1-dodecanoic acid(略称FSC)等のフッ素系界面活性剤、さらにはエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素ポリマーについて、亜臨界水を用いて分解することを検討した。その結果、過マンガン酸カリウムを酸化剤として添加して300~350℃で反応させることで、高効率にフッ化物イオンが得られることを明らかにした。それらの反応機構について考察すると共に、得られた反応液に水酸化カルシウムを作用させて人工蛍石を合成した。
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