研究課題/領域番号 |
18H03404
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松宮 正彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (00370057)
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研究分担者 |
佐々木 祐二 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (20354839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有価物回収 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
希土類資源の安定供給策は国家規模での重要課題に位置付けられ、我が国独自の希土類回収技術の開発は喫緊の課題である。「湿式精錬技術」と「電解析出技術」の統合に向けて、平成30年度は湿式精錬における酸溶出、脱鉄処理に関する研究を主体的に遂行した。
<鉄族元素の完全分離及び湿式精錬技術の確立> 廃磁石からNd, Dyを効率的に分離する改良型の湿式精錬工程では前処理~酸溶出~脱鉄処理~抽出分離工程を順次実施した。ここで、前処理工程は廃磁石解体~熱減磁~メッキ剥離~酸化焙焼~微粉化工程で構成されており、迅速かつ効率的に研究を遂行するため、共同研究先の協力体制の下で実施した。前処理工程により廃磁石から酸化磁粉:3.2kgを回収できた。また、酸溶出工程では酸化磁粉を使用することで、希土類種の選択性を高めた上で、90%以上の希土類成分を溶出させた。さらに、脱鉄処理では凝集剤を投与せず、geothite(FeOOH)を添加することで、溶出溶液のpHを3.42まで上昇させた。酸素バブリングを継続的に実施することで、溶出溶液中のFe2+をFe3+に完全に転換させた。また、一般に濾過性の悪いコロイド状のFe粒子は形成されず、α-FeOOHの形態で沈殿形成させた。このように種結晶法による沈殿形成により、迅速な固液分離を実現し、鉄族元素の完全分離(99.9%以上)を実現した。 本研究で新たに導入した溶媒抽出法では、抽出剤:TDdDGA/希釈剤:n-dodecaneを適用し、水相, 有機相各4段で構成される向流接触の多段抽出試験を実施した。ここで、第2~第4水相は金属イオンを添加しない洗浄水相として利用した。各段でのDy/Nd分離係数を高めていくことで、最終的に水相側に92.1%のNd成分、有機相側に92.0%のDy成分を移行させることができ、希土類成分の選択的な相互分離が実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の理由は、平成30年度の研究計画は全て達成できていることに基づいている。また、共同研究先との連携により、「湿式精錬技術」における前処理工程は、円滑かつ迅速に遂行でしてきた。さらに、本研究で新たに導入した溶媒抽出工程では、研究分担者である(原子力機構)佐々木祐二先生のご協力の下、Dy/Nd分離係数が高い抽出剤:TDdDGAを適用することで、向流多段抽出法により、Nd, Dy成分(90%以上)の相互分離を実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は「希土類錯体種の分光学的解析及び核生成挙動解析」に向けて、以下の研究を計画している。 1)希土類抽出錯体の分光学的解析及び核生成挙動解析 「イオン液体電析法」に基づく希土類金属の回収では、イオン液体中での希土類抽出錯体の溶媒和構造と核生成挙動が最も重要な因子となる。特に、希土類種に対する抽出剤の配位子としての結合力の強さやイオン液体を構成しているアニオン種の配位子としての結合力の強さは、電解還元の容易さを判断する指標となる。そのため、ラマン分光法と紫外可視分光法を併用して、希土類種の二座配位子となる抽出剤やTFSAアニオンの配位環境を詳細に解析する。 2)上記1)と並行して、ランタノイドに対しても基底関数が充実している密度汎関数計算を実験と同時並行で実施する。理論計算側から希土類抽出錯体に関する構造最適化・振動数解析を行うことで、希土類種と配位子から構成される希土類抽出錯体の配位環境や電子密度を詳細に解析する。 3)「イオン液体電析」を効率的に実施するため、希土類種の核生成挙動解析には電気化学的手法を活用する。特に、核生成過程では同時核生成、逐次核生成の2種類の機構が存在し、過電圧依存性もあるため、電流密度(j)-時間(t)曲線の無次元解析[(j/jm)2 vs.t/tm](jm:ピーク電流密度, tm:jmに相当する時間)により、理論曲線と比較することで、核生成機構を判断する。また、実際の「イオン液体電析」で重要となる設定過電圧を的確に判断するため、核生成機構解析では、過電圧依存性と核生成機構の変化を詳細に解析する。さらに、選択的回収が重要となるジスプロシウムに対して、ミクロな核生成機構に立ち返り、できる限り過電圧が低い電析条件を見出した上で、低温電解技術に結び付ける。
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