研究課題/領域番号 |
18H03404
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松宮 正彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (00370057)
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研究分担者 |
佐々木 祐二 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (20354839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有価物回収 / イオン液体 / 湿式精錬 / 電解析出 |
研究実績の概要 |
希土類資源の安定供給策は国家規模での重要課題に位置付けられ、我が国独自の希土類回収技術の開発は喫緊の課題である。平成31年度(2019年度)は「希土類抽出錯体の分光学的解析及び核生成挙動解析」を主体的に遂行した。 1)希土類抽出錯体の分光学的解析 溶媒抽出法により安定な希土類抽出錯体を形成させる際、抽出錯体の安定度定数と錯形成状態を把握することは重要である。希土類抽出錯体:[Ln(bfa)3],(Ln=Nd,Dy)の錯形成反応に基づく安定度定数:logβ=7.47-7.78(Ln=Nd),7.86-8.05(Ln=Dy)を紫外可視分光法から明らかにした。また、抽出剤:bfaアニオンの配位により、水相側のアクア錯体の分光スペクトルが高エネルギー側にシフトしており、抽出錯体が安定化することが明らかとなった。さらに、ラマン分光法により希土類抽出錯体[Ln(bfa)3]を解析した結果、第一配位圏ではbfaアニオンが主として配位し、TFSAアニオンは第二配位圏に存在していることが明らかとなった。このようにイオン液体系で錯形成状態を解析することにより、還元過程で関与する希土類抽出錯体種を明確化することができた。 2)電解析出過程における核生成挙動解析 金属種の効率回収に向けて、電析初期段階での核の生成・成長機構が重要となる。本研究では希土類抽出錯体を含むイオン液体系での電気化学測定(Chronoamperometry)で得られた電流-電位曲線から各過電圧における核生成機構を解析した。その結果、[Ln(bfa)3],(Ln=Nd,Dy)の還元過程では、核生成機構に過電圧依存性が見受けられた。過電圧が低い段階では同時核生成機構で進行し、過電圧の増加に伴い、逐次核生成機構へ移行することが明らかとなった。このように電解析出過程では過電圧の制御により、電析物の形態制御を行うことが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の理由は平成31年度(2019年度)の研究計画「希土類抽出錯体の分光学的解析及び核生成挙動解析」は全て達成できていることに基づいている。 1)希土類抽出錯体の分光学的解析(ラマン分光法と紫外可視分光法を併用し、以下の点を明確化した。) ・希土類抽出錯体[Ln(bfa)3],(Ln=Nd,Dy)の安定度定数及び錯形成状態評価(第一配位圏及び第二配位圏) 2)電解析出過程における核生成挙動解析(イオン液体系での電気化学測定(Chronoamperometry)により、以下の点を明確化した。) ・[Ln(bfa)3],(Ln=Nd,Dy)の電解析出挙動・核生成挙動(過電圧依存性) ・SEM/EDX,XPS,XRDによる電析物の化学組成・酸化状態
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は「実廃棄物からの希土類高純度化プロセスの適用性検討」に向けて、以下の研究を計画している。
1)2018年度,2019年度の研究成果に基づき、実際のHDDに使用されているボイスコイルモーター(廃希土類磁石)から一連の【改良プロセス:前処理~酸溶出~脱鉄~抽出分離~イオン液体電析】を実行することを計画している。本研究の遂行により、湿式精錬法によるNd, Dyの分離率及び電解析出工程での回収率を評価する。ここで、磁石部材供給及び前処理工程での酸化磁粉作製に関しては必要に応じて、企業側の協力を受けて実施することを計画している。。
2)上記の【改良プロセス】において、希土類水酸化物の添加による脱鉄処理及び溶媒抽出工程の新規導入により、最終的な希土類高純度化技術に対して、どの程度の省エネルギー効果に結び付くかを従来技術と比較して定量的に判断する。
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