研究実績の概要 |
希土類資源の安定供給策は国家規模での重要課題に位置付けられ、我が国独自の希土類回収技術の開発は喫緊の課題である。2020年度は「実廃棄物からの希土類高純度化プロセスの適用性検討」を主体的に遂行した。 1)2019年度までの研究成果をプロセス技術に反映するため、「イオン液体電析」に関する研究を遂行した。ここで、核生成挙動解析から得られた電気化学挙動に基づき、希土類混合系(Nd,Dy)における定電位電解試験では、過電圧を-3.25V(Nd), -3.75V(Dy)にそれぞれ設定することで、両希土類種の選択的回収を実現できた。電解試験後の黒色電析物に対して、SEM/EDXにより表面形態の観察と元素分析を行った結果、粒子状物質が凝集化されており、Nd,Dyに対するエネルギースペクトルが顕著に検出されていた。また、XPSにより電析物の深さ方向に対する化学結合状態を評価した結果、深さ方向の増加に伴い、電析物中の炭素、酸素含有量を1.0wt.%以下まで抑制できることが判明した。 2)実際の廃磁石(酸化磁粉:4.08kg)と酸媒体14.2Lを利用して、前処理~湿式精錬~イオン液体電析に至る一連のプロセスを実施した。種結晶法に基づく脱鉄処理を導入した【改良型湿式精錬工程】を実施することで、鉄族元素の分離率:99.9%以上を達成でき、完全なる鉄分離技術を確立できた。また、10回の湿式連続処理を実施して回収した希土類アミド塩の総重量:4.72kgであり、組成分析結果から純度:97.1wt%であった。希土類アミド塩を利用した電解析出試験では、電析物として1.928gを回収でき、陽極電流効率は90.8%, 陰極電流効率は71.3%であった。本研究により希土類アミド塩の大量生成技術の確立と高純度化の研究目標を達成できた。
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