研究課題/領域番号 |
18H03407
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 太士 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90172436)
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研究分担者 |
萱場 祐一 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究グループ長 (00355827)
山浦 悠一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20580947)
根岸 淳二郎 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (90423029)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 河道の樹林化 / 流木 / 洪水撹乱 / 河畔域 / 鳥類 |
研究実績の概要 |
国土交通省が管理する109水系の管理区間を対象として樹林化の進行と河道内に形成された樹林地がどのような地被から転換されているかを分析した。具体的には、1㎞毎の地被状態を水面+裸地、草地、樹林地、人工地に分類し、Ⅲ期(1990~1995年度)からⅤ期(2001年~2005年度)の2時期において1)河道面積が大きく変化せず、2)樹林地が5%以上増加した区間を抽出した。この結果、樹林化が進行した区間には、人工地の増大によって説明できる区間も多く、人為的な利用圧の低下(例、耕作放棄地)も樹林化に寄与していることが示唆された。 札内川中流域を対象に、水生昆虫羽化成虫による河畔域の森林植生利用と河川堤防に付随した多年草植生帯がその利用に及ぼす影響を定量化した。横断方向への飛翔距離や群集構造で評価した河畔域利用の程度は目レベルで明瞭に異なり、特に河床間隙域由来のカワゲラ目昆虫において森林植生の利用度が高かった。一方で、堤防の植生帯は、河川からの距離が水生昆虫の飛翔距離に対して十分に小さい場合に、生息場として利用されていた。河畔域の植生帯が、水生昆虫の成虫期の生息場として重要であることが示唆された。 火山性地質においては湧水成分が多くなり、非火山岩地質と比べると夏季においても低温が維持されることから、温暖化の影響を予測するために地質を加味した水温の分布を予測できるモデルを完成させた。 土地利用の変化が鳥類群集に与えた影響を北海道の石狩平野で推定した。各種資料から最近100年間の土地利用を再構築した。土地利用と鳥類各種の個体数の関係を統計モデルで記述し、過去の土地利用に当てはめた。その結果、この時期土地利用は森林が激減した一方で、畑は一時期増加したが水田に置き換わり減少していた。これに伴い、裸地性鳥類以外の湿地性、草地性、森林性鳥類は長期的に大きく個体数を減らしていたと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹林化のメカニズムについて、これまで河床低下等の物理環境の変化が注目されていたが、今年度の解析の結果、人為的な利用圧の低下(例、耕作放棄地)も樹林化に寄与していることが示唆された。 また、水生昆虫羽化成虫による河畔域の森林植生利用について、目レベルで明瞭に異なっており、特に河床間隙域由来のカワゲラ目昆虫において森林植生の利用度が高かったことが明らかになった。 将来の温暖化が水生生物に及ぼす影響を予測するために、地質を考慮した水温モデルを完成させることができ、気温と水温、地質や土地利用を加味した温暖化予測が可能になりつつある。 さらに、各種資料から最近100年間の土地利用の変化が鳥類群集に与えた影響を明らかにできた。この時期、森林が激減した一方で、畑は一時期増加したが水田に置き換わり減少したため、裸地性鳥類以外の湿地性、草地性、森林性鳥類は長期的に大きく個体数を減らしていたことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
樹林化のメカニズムを水理学的モデル解析を実施し、耕作放棄などの人為的影響も考慮して論文化する。北海道の河畔域では炭鉱開発による村がかつて栄えたが、炭鉱の閉山とともに人口が減少し、廃村となっている場所も多い。廃村後の植生遷移についても検討したい。 樹林化および地質、土地利用、洪水撹乱の違いが、河川内の一次生産量(付着藻類量)と堆積有機物量、底生動物の種組成、水生昆虫の羽化タイミング、捕食者としての砂礫堆地表性甲虫の分布に与える影響を調査し、論文化する。 さらに、石狩川流域の近年100年にわたる土地利用変化が鳥類群集に与えた影響について、更なる解析を進め、論文化する。
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