研究課題/領域番号 |
18H03409
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 浩之 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10374620)
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研究分担者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (20515861)
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (80408658)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ドローン / バーチャルリアリティー / 植生モニタリング / 非侵襲的調査 / 省力化 |
研究実績の概要 |
UAV・全方位カメラ・VR技術を駆使した新植生調査法を開発することを目標としており、以下の3つの小課題を設けて研究を遂行している。 課題1の植生挿入型全方位カメラ・ジンバルの開発では、複数回の現地試験(篠路福移湿原、別寒辺牛湿原)でのトラブルシューティングを踏まえてジンバル等の再設計を行い、大型と小型のカメラ用に2つのタイプの植生挿入型ジンバルを完成させた。これにより群落内部で安定した映像を取得することに成功した。また、障害物回避と仮想コドラート表示を目的として、監視カメラと超音波・レーザー距離計を統合したモニタリングシステムを開発した。 課題2の適切な飛行・撮影方法では、H30年度に検討した撮影方法や飛行プランについて現地試験を実施し、UAVを用いた湿地植生の調査プロトコルを検討した。その結果、①UAV空撮とオルソ画像作成、②オルソ画像上での群落の違いを考慮した調査地点の設定、③各調査地点での全方位カメラ搭載UAVによる撮影の手順が有用であると考えられた。また、全方位カメラ搭載UAVによる撮影では、操作の安全性・効率性と撮影時の安定性の点から調査地点までの自動飛行と調査地点での手動操作を組み合わせた飛行プランが有効と考えられた。 課題3のVR映像を用いた植生調査法の開発と精度検証では、様々な湿原植生タイプをカバーする別寒辺牛湿原にて、課題1で開発した2つのタイプの植生挿入型全方位カメラ搭載UAVを用いた植生撮影を行い、得られた画像をもとにモニタおよびVRゴーグルを用いて植生調査を行った。種発見率および群落分類の正確さは、群落のより内部まで挿入可能な小型タイプにおいて最も成績が良好となり、特に中程度の被度を示す種群の発見率向上がそれらの成績向上に大きく貢献した。被度の判読については、小型タイプの全方位カメラ搭載UAVとVRゴーグルを組み合わせた調査において最も誤差が小さくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1の植生挿入型全方位カメラ・ジンバルの開発では、群落内に安定して挿入できる大型の高解像カメラ用、小型の中解像度カメラ用の2つのタイプの植生挿入型ジンバルを開発した。また、UAVの飛行の安定性や飛行可能時間の延長を目的としてジンバル等の軽量化を図った。それらを用いて課題3の現地調査を実施した。さらに、樹木等の障害物回避、仮想コドラートの画面表示、飛行高度の監視を目的として、カメラと超音波・レーザー距離計を統合したモニタリングシステムを開発した。このほか、全方位カメラ映像を用いた湿地景観映像のアーカイブ化についても検討し、篠路福移湿原や雨竜沼湿原等のバーチャルツアーを作成した。 課題2の適切な飛行・撮影方法では、H30年度に延期していた現地試験を実施した。その結果、地上への接近方法や調査地点の設定方法などについて、飛行の安全性や効率性に関する改善が必要であることが判明した。そこで、撮影方法や飛行プランについてはUAVを用いた調査の流れや使用するアプリケーションを再検討し、当初の計画通りにUAVを用いた湿地植生の調査プロトコルを完成させた。 課題3のVR映像を用いた植生調査法の開発と精度検証では、出現種数が多く複雑な群落構造を示す湿原植生を対象に、課題1および2で開発された2つのタイプの植生挿入型全方位カメラ・ジンバルと飛行プランを用いて植生調査を実施した。それらの新規開発機器の利用により、群落分類においては地上での植生調査と遜色ない結果が得られることが判明した。しかし、被度の低い小型種群については、近距離撮影時に撮影範囲から外れやすいため、いずれのタイプの機材においても発見率が低く、今後の改善が必要であると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
課題1の植生挿入型全方位カメラ・ジンバルの開発では、当初の予定通り、課題2と協力して飛行試験を繰り返し、開発した植生挿入型全方位カメラ・ジンバルやモニタリングシステムのトラブルシューティングを行い、必要に応じて機器の改良を行う。また、ハードウェアの使用法や取得した映像の処理に関するプロトコルを作成する。また、課題3と協力して仮想コドラートの表示法についても検討する。また、UAVと全方位カメラを用いて作成したVR映像のアーカイブ化についても検討する。 課題2の適切な飛行・撮影方法では、R1年度に改良した飛行・撮影プロトコルを踏まえて、UAVを用いた湿原植生の調査マニュアルを作成する。また、実際に作成したマニュアルを用いた現地調査を行い、作成した調査マニュアルの有効性や改善点を検証する。その際に、調査地点内の方形区内での複数点の撮影方法、UAVの飛行可能時間内で最も効率の良い飛行ルートの作成方法についても検討する。以上の成果を基に、課題3と連携して、UAVを用いた効率的・効果的な湿原植生の調査方法の確立を行う。 課題3のVR映像を用いた植生調査法の開発と精度検証では、低被度の小型種群に対する発見率を向上させるため、調査コドラート内の複数地点へカメラを挿入・撮影し植生調査を行う。1点撮影の場合と複数点撮影の場合で種数・被度・群落分類について解析・比較を行い、特に低被度・小型種群に対する複数点撮影の有効性について検討する。また、これまでの解析結果を通じて、UAV・VRを用いた湿原植生調査の利欠点をまとめ、全課題と協力して基本的な植生調査プロトコルを構築する。
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