研究課題/領域番号 |
18H03421
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 修 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20357148)
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研究分担者 |
白井 誠之 岩手大学, 理工学部, 教授 (70250850)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオマス利用 / 低環境負荷技術 / フルフラール合成 / 高温水 / 超臨界二酸化炭素 / 固体酸触媒 |
研究実績の概要 |
低炭素社会の実現に向けたバイオマスの有効利用では、分離精製後の成分原料を対象とした反応率の追及だけでは不十分であり、実バイオマスの総合利用を想定した各構成成分の逐次変換プロセスの組合せによるカスケード利用技術の体系化が必要となる。本研究では、①水‐超臨界二酸化炭素の二相反応系で固体酸触媒を作用させる環境調和型のヘミセルロース‐フルフラール変換反応に続き、②セルロース成分に対する担持金属触媒による化学的ソルビトール変換反応と酵素による糖化(グルコース変換)、更に③②の各リグニン残渣に対する担持金属触媒による低分子(炭化水素)化反応とリグニン複合材料原料としての物性評価の検討を行う。単に個別反応の最適化を図るだけでなく、カスケード利用全体での最適化を目指すともに、最終年度には④本研究で得られた知見を基に、コンピューターシミュレーションによるプロセスモデルの構築とエネルギー収支計算を行い、新規のバイオマスカスケード利用プロセスモデルとしての総合提案を行うものである。 研究1年目の平成30年度は、課題①について小型オートクレーブに、CO2導入用シリンジポンプと圧力調整器を組み合わせ、最高処理温度200℃、最大処理圧20MPa、二酸化炭素導入量0~3.76g/minの高温水-超臨界CO2二相系反応装置を作成、キシラン(ヘミセルロース)および実バイオマス(杉)の処理を検討した。170℃のキシラン処理では、耐熱性イオン交換樹脂のAmberlyst70(以下A70と略)を共存させた上で、二酸化炭素0.94g/min(20MPa)条件で連続抽出することで、高温水処理の1/2の時間(4時間)で、含有キシロースの約50%をフルフラールに変換することができた。同条件での杉処理した場合にも、含有五炭糖からの収率48.5%でフルフラールが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に示したように、研究はおおむね順調に進んでいる。 水‐二酸化炭素二相系の反応場を構築、キシラン(ヘミセルロース)および実バイオマスの杉を用いた検討を行い、フルフラール生産としての優位性を示すことができた。本研究成果の一部については、論文発表まで行うことができた(The Journal of Supercritical Fluids 144 (2019) 14 - 18)。また他の実バイオマスサンプルとして、ユーカリ、竹、とうもろこし穂軸、バガスを収集することができた。 一方、反応処理後のセルロース成分に対する酵素・糖化(グルコース変換)処理実験の構築にも着手しており、来年度には、水‐二酸化炭素二相系処理後の残渣に対する糖化反応の検討を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、今年度前半は①各種実バイオマス(杉、ユーカリ、とうもろこし穂軸、バガス)を用いたヘミセルロース変換の検討を進めるとともに、②セルロース成分のソルビトール変換反応および酵素糖化用の処理残渣試料として必要量の確保に重点をおく。後半には両反応の検討を本格的開始する。糖化処理後のリグニン残渣については、更に物性評価用試料として十分な量の確保に努める。 ①②の実験データを基に、ヘミセルロース変換プロセスの基本モデル設計にも着手し、プロセスフローや使用エネルギー計算などのプロセスシミュレーションを、岩手大学の協力のもと進める。
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