研究課題/領域番号 |
18H03422
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研究機関 | 一般財団法人林業経済研究所 |
研究代表者 |
志賀 和人 一般財団法人林業経済研究所, 一般財団法人林業経済研究所, フェロー研究員 (70334034)
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研究分担者 |
平野 悠一郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00516338)
石崎 涼子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353575)
山本 伸幸 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90284025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 森林管理制度 / 森林認証 / 森林経営 / 市町村有林 / 財産区・一部事務組合 / 森林利用 / 地元関係 / 私有林 |
研究実績の概要 |
日本と北欧・ドイツ語圏諸国における歴史的制度論分析と国際比較及び都道府県、市町村の政策形成に関する参与観察と国内実態調査を統合し、現代日本の森林管理制度変化の特徴と地域ガバナンスの関係性を検討するため、研究計画に示した研究方法に基づき、以下の文献調査と国内・海外調査を実施し、研究成果を公表した。 文献・国内調査では、国内調査の結果を『現代日本の私有林問題』としてとりまとめ、2020年度科研研究成果公開促進費学術図書に申請し、採択された。また、研究代表者を中心に公有林野全国協議会(2017)「市区町村の公有林に関するアンケート調査」の個票データと既存の実態調査報告、森林認証取得組織の分析に基づき市町村・財産区に関する調査対象を絞り込み、北海道、長野県、静岡県、岡山県、島根県、山口県、徳島県、鹿児島県の林務組織・市町村、森林組合を対象とした現地調査を実施した。研究成果として、古典林学の森林経営・森林管理、林務組織論を参照し、現代日本の森林管理と林務組織の再構築に関する課題を市町村有林とPEFC/SGEC森林認証におけるグループ認証の実態調査から検討した(志賀学会報告及び図書)。また、戦後林政の起点となった制度形成と森林技術者、林政学者の関係をライフコース分析(山本雑誌論文及び学会報告)から明らかにし、森林レクリエーション・スポーツ利用などの新たな森林利用と文化的価値の創生に向けた森林価値研究の射程を検討した(平野雑誌論文)。 海外調査では、2018年度のスウェーデン、フィンランド、ドイツのPEFC森林認証管理団体と認証取得組織の現地調査に加えて、ノルウェー、オーストリアの現地調査を行い、欧州諸国の森林認証の展開とグループ主体の特徴を明らかにした(早舩学会報告)。また、ドイツ・バーデン・ヴュルテンベルク州の事例から施業管理システムにおける森林官の役割を検討した(石崎雑誌論文)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究方法・調査対象の確定と文献・国内・海外調査の進展度、成果の公表について、以下の通り「おおむね順調に進展している」。 1 研究方法・調査対象の確定:市町村・財産区有林に関する公有林野全国協議会(2017)と市町村史の分析から、①大規模市町村有林における森林利用と貸付・分収林の変化、②森林経営の展開と主伐・再造林の動向、③施業・経営委託と森林組合・林業事業体の関係に注目し、現地調査対象市町村を選定し、現地調査を実施した。さらに森林レクリエーション・スポーツなど新たな森林利用と自治体林政の展開を検討し、研究方法と調査対象を順次、確定していく。 2 国内調査:市町村・財産区有林の現地調査を実施し、公有林の地元関係と経営管理体制を検討した。また、これまでの国内調査の結果を『現代日本の私有林問題』としてとりまとめ、2020年度科研研究成果公開促進費学術図書に申請し、採択された(課題番号:20HP5228)。 3 海外調査:緑の循環認証会議(SGEC/PEFCジャパン)と連携し、スウェーデン、フィンランド、ドイツのPEFC認証管理団体と認証取得組織の現地調査を行い、各国の代表的森林経営組織と林産企業の現状を把握した。2年目以降は、オーストリア、ノルウェー、東欧諸国等に調査対象を拡大し、欧州各国の林務組織と代表的森林経営・林産企業と地域ガバナンス構築における関係性分析の深化を行った。 4 研究成果の公表:雑誌論文3件、学会報告4件、図書1件(共著)を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度までの取り組みを展開し、以下の文献・国内調査と統計分析、海外調査、研究方法の検討を継続的に推進する予定であるが、新型コロナウィルス対策との関係で、海外・国内調査の実施が難しい場合は、その状況により統計分析やこれまでの現地調査資料の分析を進めるなど柔軟に対応する。 1 文献・国内調査:市町村史の検討と統計分析に基づき、市町村・財産区有林における森林利用と森林経営の実態を把握する。その際に市町村有林の沿革等と入会・林野利用の推移、共有林の分割と経営展開を旧市町村単位で把握し、市町村有林・財産区有林等の一体的把握に努める。また、文献調査と現地調査の統合を図る。 2 海外調査:新型コロナウイルスの感染動向に留意し、可能な範囲で各国の州・市町村段階の林務組織や技術者の存在形態と任務に関して、資料分析や現地調査から林務組織と森林利用と環境管理に関する州・ゲマインデ林務組織と林業技術者の存在形態を明らかにする。以上に基づき森林管理制度の現代的展開と地域ガバナンスに関する比較研究の方法と北欧諸国のPEFCグループ認証に関する国際比較を深化させる。 3 研究成果の公表:2020年度科研研究成果公開促進費(学術図書)に採択された『現代日本の私有林問題』を刊行し、関係学会や行政組織・関係団体、産業界との意見交換を進める。国内・海外調査に加え、都道府県・市町村段階の森林経営の歴史と所有形態の多様性,地域社会と土地利用・森林管理の現代的関係性に注目し、当初の研究計画に基づく研究成果のとりまとめを行う。
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