研究実績の概要 |
2020年度は本研究の3つの基盤技術のうち、【耐塩性微生物を用いたバイオレメディエーション】において、以前に不測の事態で実施できなった重金属を含めた検討を行った。具体的には、工業的に多用されるアゾ染料の中でも、Pestalotiopsis sp. SN-3菌による脱色能が確認されているアゾ染料 3種および生態毒性が報告されている重金属 (鉛 [Pb]) を対象物質とした。染料を各7 mg/L、Pbを0.1 mg/Lに複合し、塩濃度を調整した人工海水 (NaCl 0, 1.5, 3%) に、アルギン酸カルシウムを用いて作製した固定化SN-3菌を培養した後、培養上清を吸光度測定および重金属濃度測定を行い、染料脱色率および重金属濃度の変化を測定した。対照として、菌を含まずに固定化したアルギン酸カルシウム区 [Ca-Alginate] 、固定化していないSN-3菌区、SN-3菌およびアルギン酸カルシウムを含まない菌未接種区 [Control] を設置した。検討した3種の染料いずれについても、固定化SN-3菌は固定化していないSN-3菌と同程度の脱色率を示した。また、Pb濃度はControl (0.1 mg/L) から固定化SN-3菌による除去でNaCl 3%の場合0.01 mg/Lまで低下して、NaCl 0%および1.5%の場合は、いずれも検出限界 (0.01 mg/L) 以下まで低下した。固定化していないSN-3菌においては、ControlとのPb濃度変化が見られなかったことから、SN-3菌はアルギン酸カルシウムを用いて固定化することで、Pb除去の効率化が可能であることが示された。以上のことから、人工海水を用いた固定化SN-3菌の培養において、複合染料脱色およびPb除去が確認され、塩濃度に影響を受けやすい微生物処理において、固定化SN-3菌は有用性を持つことが示唆された。
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