本研究では、小規模漁業におけるリーダーシップや社会団結力がどのような社会的、文化的、地理的要因から生成されるのか、漁獲物がどのように利用されているのか、ソロモン諸島の漁業を対象に明らかにすることを目的としている。その目的達成のため、2019年に聞き取り調査で収集したガダルカナル地域の漁村漁業者データを用いて、ネットワークデータによる計量分析を行い、以下の知見を得た。 ソロモン諸島社会には慣習制度Wantokがあるが、その伝統的側面において部族チーフが、植民地時代以降の近代的側面においては教会主が、漁具や漁獲物の分配、日常や資源管理の多くの場面にわたり漁業者は社会的関係を持つこと相手であることが明らかになった。また、より血縁関係が強い種族間では、漁具・漁獲物の分配における関係がある一方で、資源管理のためのルール違反者の通報はされないことが明らかとなった。また、経済的理由として、漁獲物から多くの現金収入を得る漁業者ほど、ルール違反者の通報や、資源管理ルールにたいする遵守を求められる社会的関係を築いてないことも明らかになった。これらについては、環境経済・政策学会2022年大会で発表報告を行った。 また、対象地域の漁業者の7割が漁獲したCoral reef fishを販売し、漁業を現金収入源と位置づけて、生計を立てていることが明らかになった。そのため、さらに研究を掘り下げて、その魚の価格決定や販路はどのようになっているのか、ホニアラ中央市場で調査を実施した。その結果、魚の価格は、購入者の容姿、販売場所と関係していることが明らかになった。また、魚の販売名目重量と実重量には差があり、同様の要因によって説明されることを明らかにした。これらについては、2023年豪州農業経済学会で報告した。また、販売経路は他州の多くの島々から、主に家族経営をベースに販売に来ていることまで明らかにした。
|