研究課題/領域番号 |
18H03431
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
大野 栄治 名城大学, 都市情報学部, 教授 (50175246)
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研究分担者 |
森杉 雅史 名城大学, 都市情報学部, 教授 (00314039)
石川 良文 南山大学, 総合政策学部, 教授 (20329577)
鶴見 哲也 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (50589364)
森 龍太 名城大学, 都市情報学部, 助手 (80782177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー事業 / 環境経済政策 / 総合評価手法 / 温暖化対策 / 地域活性化 |
研究実績の概要 |
まず、持続可能な地域づくりに資する環境経済政策の先進的取組事例を訪問・調査し、その成功要因や課題などに関する知見を整理した。訪問先は、1)福島県南相馬市、2)岩手県葛巻町、3)NPO法人くまもと温暖化対策センター(熊本県熊本市)、4)特定非営利法人九州バイオマスフォーラム(熊本県阿蘇市)、5)西湯浦牧場・狩尾牧場・跡ケ瀬牧場(熊本県阿蘇市)、6)ぎふ・森林起点型地域社会システム研究会(岐阜県高山市)、7)OECD本部(フランス・パリ市)、8)Urban Ecology Agency of Barcelona(スペイン・バルセロナ市)、9)スペイン・グラノリェース市、10)デンマーク・コペンハーゲン市、11)デンマーク・ロラン島、の11箇所である。 次に、再生可能エネルギー事業の経済面・社会面・環境面での政策評価に関する方法論として、1)産業連関分析に基づく経済面での政策評価に関する方法論<担当:石川良文>、2)応用一般均衡分析に基づく経済面での政策評価に関する方法論<担当:森杉雅史>、3)コンジョイント分析に基づく社会面での政策評価に関する方法論<担当:鶴見哲也>、4)仮想市場評価法に基づく環境面での政策評価に関する方法論<担当:森龍太、大野栄治>、5)階層分析法に基づく地域政策の統合評価に関する方法論<担当:大野栄治>を検討した。3)と4)については、方法論の検討を踏まえてインターネット利用のアンケート調査を実施した。調査の題目は「自然エネルギーと生活の質に関する調査」である。調査は平成31年12月26日に発注、調査結果は平成31年2月6日に納品された。早速、回答データの共分散構造分析を実施し、太陽光パネル設置、社会貢献意識、幸福度などの要素間の統計的関係性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、国内6箇所・国外5箇所における持続可能な地域づくりに資する環境経済政策の先進的取組事例を訪問・調査し、そこから得られる知見を整理した。例えば、スペイン・グラノリェース市におけるCaseus Afinadors(太陽光発電による電力を活用したチーズ工場)の取組は、単なる再生可能エネルギーの活用にとどまらず、チーズの生産・品質管理・流通の仕組みを大きく改革したものであった。他所においても、単なる化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換にとどまらず、産業構造のイノベーションと地域社会の新たな価値創造を図り、行政の支援(補助金)、地域住民の支援(協働)、消費者の支援(購買)を上手く引き出していることが分かった。 次に、再生可能エネルギー事業の経済面・社会面・環境面での政策評価に関する方法論を検討した。1)産業連関分析に基づく経済面での政策評価に関する方法論については、再生可能エネルギー事業による経済効果の波及構造を把握・整理するべく地域内及び地域間産業連関表を整備した上で方法論を検討した。2)応用一般均衡分析に基づく経済面での政策評価に関する方法論については、再生可能エネルギー事業導入による帰着ベース経済効果の導出する方法論を検討した。3)コンジョイント分析に基づく社会面での政策評価に関する方法論の構築については、再生可能エネルギー事業の社会面での効果を整理した上で方法論を検討した。4)仮想市場評価法に基づく環境面での政策評価に関する方法論については、再生可能エネルギー事業の環境面での効果を整理した上で方法論を検討した。5)階層分析法に基づく地域政策の統合評価に関する方法論については、持続可能な地域づくりを目指す環境経済政策の効果が多様であることを踏まえた上で方法論を検討した。3)と4)については、方法論の検討を踏まえてインターネット利用のアンケート調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、(1)持続可能な地域づくりに資する環境経済政策の先進的取組事例から得られる知見の整理については、引き続き国内外の訪問・調査を実施する。その際、化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換に伴い、どのように産業構造のイノベーションと地域社会の新たな価値創造が図られているのか、どのように行政の支援(補助金)、地域住民の支援(協働)、消費者の支援(購買)が引き出されているのかを詳しく調査する。 次に、(2)再生可能エネルギー事業の経済面・社会面・環境面での政策評価に関する方法論の構築については、1)産業連関分析に基づく経済面での政策評価、2)応用一般均衡分析に基づく経済面での政策評価、3)コンジョイント分析に基づく社会面での政策評価、4)仮想市場評価法に基づく環境面での政策評価、5)階層分析法に基づく地域政策の統合評価、それぞれの政策シミュレーションの実施までを目標に推進する。3)と4)については、昨年度に実施したアンケート調査の回答データを用いて、評価モデルの推定から詳細な分析まで進める。5)については、階層分析法の理論と応用に関する多数の業績をもつ杉浦伸氏(名城大学准教授)を研究協力者として迎えて方法論を構築するとともに、その方法論を踏まえてインターネット利用のアンケート調査を実施する。 さらに、(3)持続可能な地域づくりに資する環境経済政策の在り方と目指すべき方向性の明確化については、(1)の訪問に併せて調査を実施するとともに、(2)で構築した政策評価に関する方法論やこれらを用いて実施した総合評価を通じて、温暖化対策と地域活性化が両立するような地域政策の立案や意思決定に関する知見や課題などを整理する。
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