研究課題/領域番号 |
18H03431
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
大野 栄治 名城大学, 都市情報学部, 教授 (50175246)
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研究分担者 |
森杉 雅史 名城大学, 都市情報学部, 教授 (00314039)
石川 良文 南山大学, 総合政策学部, 教授 (20329577)
鶴見 哲也 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (50589364)
森 龍太 名城大学, 都市情報学部, 助教 (80782177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー事業 / 環境経済政策 / 総合評価手法 / 温暖化対策 / 地域活性化 |
研究実績の概要 |
本研究は、持続可能な地域づくりに資する環境経済政策の総合評価能方法論、および評価結果を地域における環境経済政策の立案や実施の意思決定に反映させるための方法論を確立することを目的とし、令和2年度には再生可能エネルギー事業の経済面・社会面・環境面での政策評価に関する方法論の開発を中心に行った。 産業連関分析に基づく方法論:再生可能エネルギーの経済効果を分析可能な産業連関分析の基本モデルを構築した。特に任意の地域で分析が可能なように自給率の推計モデルを検討し、都道府県のサーベイデータを用いることで自給率モデルのパラメータを推計した。また、事例分析として南相馬市の再生可能エネルギーの経済効果を分析した。 応用一般均衡分析に基づく方法論:再生可能エネルギー普及促進策(温暖化の緩和策)の効果を吟味することが最終目標であるが、国内における温暖化の緩和策と適応策の資源配分効率性を吟味することも重要である。そこで、温暖化に伴う海面上昇による砂浜消失の適応策(養浜事業)の効果を分析するための応用一般均衡モデルを構築した。 コンジョイント分析に基づく方法論:再生可能エネルギーが社会に及ぼす影響について、幸福度の観点から検証を行った。特に、資源利用が幸福度に及ぼす影響について、消費する物品に対する愛着の観点から消費が幸福度に及ぼす影響を検証した。その結果、長く活用するような消費スタイルが幸福度にプラスに寄与する可能性を見出した。 仮想市場評価法及び階層分析法に基づく方法論:令和元年度に実施したWeb調査「再生可能エネルギー事業に関する意識調査」のデータを用いて、仮想市場評価法及びコンジョイント分析により、再生可能エネルギー事業の環境経済価値の計測を試みた。また、階層分析法により、再生可能エネルギー事業に関する代替案の優先順位付けを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産業連関分析に基づく方法論については、再生可能エネルギーの経済効果を分析可能なモデルは構築できたが、ベースとなる都道府県表の公表がコロナ禍により遅れたために、全ての都道府県のデータを収集することができなかった。また、先進事例調査についてもコロナ禍のためにインターネットを通じた予備的な調査したかできなかった。 応用一般均衡分析に基づく方法論については、応用一般均衡分析のモデル構築に必要な産業連関表がどのようなレベルで入手可能か、またどのような空間スケールまでブレイクダウンが可能かを吟味した。空間スケールとしては国内であるが、詳細な発電部門を組み込んだ早稲田大学研究グループのエネルギー分析用産業連関表を参考にすることとした。 コンジョイント分析に基づく方法論については、再生可能エネルギーに関連して、物品消費が幸福度に及ぼす影響について検証を行った。その結果、長く大切に活用するような消費スタイル、そして倫理的な消費スタイルが単位消費量あたりに得られる幸福度を増大させることを見出し、順調に研究成果を出すことができた。 仮想市場評価法に基づく方法論については、持続可能な地域づくりに資する住民参加型再生可能エネルギー事業を提案し、当該事業の環境経済価値の計測を試みた。その際、当該事業に関わる住民の効用関数を特定化し、当該事業に対する奉仕労働関数を導出して環境経済価値を定義したが、特定化した効用関数の妥当性に関する検討が不十分である。 階層分析法に基づく方法論については、前述の住民参加型再生可能エネルギー事業に関する代替案の優先順位付けを試みた。通常、階層分析法では、すべての代替案について一対比較等を行わなければ総合評価値を導出することはできないが、被験者の部分的な選好からプロファイル内の代替案の評価値導出と優先順位付けを可能とする方法論を提案した。
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今後の研究の推進方策 |
産業連関分析に基づく方法論については、必要なデータの作成元に公表予定を聞き取り、公表され次第自給率モデルの推計に用いることとした。また、コロナウイルス感染症の感染拡大状況を注視しつつ、現地の先進事例調査を行うこととした。 応用一般均衡分析に基づく方法論については、早稲田大学研究グループのエネルギー分析用産業連関表(2011、2015)を用いて、2012年から始まった固定価格買取制度(FIT)の影響を吟味する。同産業連関表ではFITの導入から数年後におけるその過程を具に見ることが可能であり、先ずはその社会経済的影響がいかなるものであったかを見定めることが肝要である。そこで、主に公共事業で展開される地方の適応策の効果分析についても進めていくこととする。 コンジョイント分析に基づく方法論については、消費が幸福度に与える影響について、時間の概念を含めた検証を行うこととする。具体的には、可処分時間の多少によって、単位消費量あたりに得られる幸福度が異なる可能性を検証する。本年度には長く大切に活用するような消費スタイル(倫理的消費)は単位消費量あたりに得られる幸福度を増大させることを見出したが、今後、このような消費スタイルに可処分時間が必要かどうかについての検証を行う。 仮想市場評価法に基づく方法論については、持続可能な地域づくりに資する住民参加型再生可能エネルギー事業に関わる住民の効用関数を見直し、改めて当該事業に対する奉仕労働関数を導出して環境経済価値を定義する。また、この効用関数に合わせてWeb調査「再生可能エネルギー事業に関する意識調査」の質問票を見直し、再度実施する。 階層分析法に基づく方法論については、前述のWeb調査のデータを用いて、本研究で提案した方法論(被験者の部分的な選好からプロファイル内の代替案の評価値導出と優先順位付けを可能とする方法論)の実用性を検証する。
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