研究課題/領域番号 |
18H03432
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上原 拓郎 立命館大学, 政策科学部, 教授 (60384757)
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研究分担者 |
日高 健 近畿大学, 産業理工学部, 教授 (30309265)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 沿岸域の多段階管理方式 / 里海 / 沿岸域総合管理 / ネットワーク・ガバナンス |
研究実績の概要 |
本研究は研究代表者による里海,生態系サービス,包括的富指標を統合した,統合的沿岸域管理のための分析手法の確立と研究分担者による多段階管理システムの分析フレームワーク及びステークホルダー間の関係モデルのフレームワーク等,新しいフレームワークの構築を中心とした里海管理手法の開発により構成される研究を進めてきた. 研究代表者の上原は望ましい沿岸域の姿である里海を定義するための基礎作業として里海概念を整理した(上原ほか(2019);Uehara et al. (2021)).また,近年,注目されつつある自然と人,自然と人のつながりといった関係性そのものに価値を見出す関係価値に着目し,里海と関係価値の関係性および可能性について整理を行った(Uehara et al. (2020); 上原&藤田(2021)).更に,望ましい姿を明らかにするための順応的社会生態系管理マトリックスの開発を,播磨灘を事例として行ってきた(Uehara et al. (投稿中)). 2019年度に兵庫県明石市沖のタコ釣りルール化を対象に実施した調査と作成したフレームワークに基づき、要因間の因果関係ループ図とステークホルダー間の関係図により多様な関係者が参加するルール作りのモデルを整理した(日高ほか (2021))。また、2018年度に作成した多段階管理システムの分析フレームワーク(日高 (2018))を使って,兵庫県,香川県における沿岸域管理のステークホルダーに関する情報収集と分析・評価を行い,当海域に多段階管理システムを導入する可能性と課題を検討した。また、宮城県南三陸町における里海と里海ネットワークの取り組みについて分析するとともに、改正瀬戸内法に基づいて作成された香川県計画と里海づくり構想の連携について情報収集を行い,両者の比較検討を行った(Hidaka (2020))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の担当部分については当初予定では包括的富指標を計算するためのシャドウプライスの収集や自然・人的・人工資本のデータ収集を行う予定であった.しかし,新型コロナウイルスの影響により当初予定していたヒアリングや現地調査がすべて中止となったために望ましい里海のステップに多くの時間を要したため,シャドウプライスとストックの収集の着手には至っていない. 研究分担者の担当部分については,新型コロナウィルスの影響により兵庫県、岡山県、香川県への訪問調査を行うことが出来ず、公表文書やHPだけから情報収集せざるを得なかった。香川県については里海づくりの取り組みに進展があり、論文で事例として紹介することが出来た。岡山県については備前を中心とした取り組みに進展がうかがえたものの、まとめるには至らなかった。兵庫県については明石市沖の取り組みに加え、水質基準の下限値設定や湾灘協議会の組織化が進んでおり、情報の収集は一定程度できた。英国ハルで9月に開催予定であった国際学会(EMECS)は新型コロナウィルスのために延期になった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は望ましい姿の設定のための基礎作業として,里海概念の整理を行った.更に,ヒアリング調査及び文献研究により,望ましい姿を明らかにするための順応的社会生態系管理マトリックス(adaptive social-ecological system management matrix)の開発を行ってきた.今年度は,本マトリックスを完成させる.加えて,本マトリックスを用いて包括的富指標を計算するためのシャドウプライスやストックデータの検討を行い,統合的沿岸域管理のための分析手法の確立を目指す. まず、兵庫県、岡山県、香川県における沿岸域管理のステークホルダーに関する情報収集と分析・評価を行い、2018年度に作成した多段階管理システム(日高 (2018))と、2020年度に作成したステークホルダー間の関係モデル(日高ほか (2021))を使って、当海域にネットワーク・ガバナンスに基づく多段階管理システムを導入する可能性と課題を明らかにする。兵庫県、岡山県、香川県において改正瀬戸内法に基づいて結成された湾灘協議会については、それらの構成と機能および実際の活動に関する情報収集を行い、ネットワーク・ガバナンスの仕組みとして評価する。さらに、包括的富指標の活用による全体管理の可能性について検討する。
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