研究課題/領域番号 |
18H03437
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
朴 宣美 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80455914)
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研究分担者 |
國分 麻里 筑波大学, 人間系, 准教授 (10566003)
古川 宣子 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20307143)
李 正連 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (60447810)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植民地教育 / 女子教育 / ミッションスクール / 女性宣教師 / アメリカ北部メソジスト監督教会 / 日新女学校 / 朝鮮人女教師 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、植民地朝鮮で女子教育を行ったアメリカ人女性宣教師について分析すること、釜山地域における女子ミッションスクールと公立女子学校の実態を調査し、釜山地域における朝鮮人女教師の役割を分析する手がかりを得ることにその目標を置き、以下のような成果を得た。 第一に、アメリカ北部メソジスト監督教会海外女性伝道協会(WFMS)の女性宣教師により朝鮮で実施された女子高等教育について明らかにした。欧米の様々なプロテスタント教派は、19世紀末から朝鮮に女性宣教師を派遣し、女子教育を実施した。その中でもアメリカ北部メソジスト監督教会は、最初に女子学校を開き、女子カレッジをも開設した。1938年度現在、WFMSにより朝鮮に設立された(他の教派と共同で設立したカレッジも含む)女子カレッジは1校(学生数239人)で、日本(3校、612人)と中国(4校、377人)に比べると少ない。しかし、朝鮮で女子高等教育を実施する女性宣教師の抱負は大きかった。「進んだ」アメリカ人女性の手によって「遅れた」朝鮮人女性を教師として養成すること、女教師として輩出された朝鮮人女性を女性宣教師の協力者として各地に送り出し、教育された母と妻、主婦が中心となる新しいホームの理想を朝鮮人女性や朝鮮社会に浸透させること、こうしてクリスチャンホームが広く形成され、国・社会が根底から文明化されていくこと、これらが女性宣教師が抱いた夢であり、自身の活動の意義でもあった。 次に、朝鮮人女教師の役割の一面として、女子学校における活動の他、学校外における活動を調査するため、資料調査と分析方法について検討した。 最後に、釜山地域における最初の女子学校である日新女学校(オーストラリア長老派教会の女性宣教師により開設)と釜山女子高等普通学校を調査して、生徒名簿、卒業生関係資料、校友誌などの一次資料を収集し、分析を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植民地朝鮮の3部類の女教師(西洋人女性宣教師、日本人女教師、朝鮮人女教師)の実態と役割を多角的に分析するという研究目的の実現にむけ、まず、女性宣教師を朝鮮へ送り出したプロテスタント教派のうち、アメリカ北部メソジスト監督教会から派遣された女性宣教師の教育活動を分析した。この教派の女性宣教師は、他教派に先んじて女子学校を開き、多くの女子学校を設立したのはもとより、高等教育まで実施し、朝鮮における女子教育の先駆け的な存在となった。その女性宣教師の教育活動について多様な一次資料から分析できた点において、本年度の研究は概ね順調に進展したとみることができる。 次に、研究メンバー4人が共同で植民地時期の釜山地域の女子教育を調査し、様々な資料を収集して、朝鮮人女教師と生徒、オーストラリア長老派教会の女性宣教師に関する研究の手がかりを得た点で、本年度の研究は、おおむね順調に進展した。 最後に、朝鮮人女教師の学校外における活動を分析する視点を持ち、資料調査に着手した点で、本年度の研究は、おおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、朝鮮で女子教育を行った女性宣教師のうち、釜山でミッションスクールを開いたオーストラリア長老派教会の女性宣教師について調査し、分析する。 第二に、朝鮮人女教師の社会活動についてさらに調査し、その実態を明らかにする。 第三に、釜山地域の女子教育(ミッション系と公立系)をさらに調査し、女教師の役割について、教育内容や生徒に及ぼした影響の面から分析を深める。 第四に、朝鮮に渡った日本人女教師について分析するため、当時、女教師を輩出して朝鮮に送り出した、日本の女子師範学校、女子高等師範学校、ミッション系の女子カレッジについて調査する。
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