研究課題/領域番号 |
18H03444
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 守恵 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 准教授 (10402752)
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研究分担者 |
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00322347)
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (80215962)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アフリカ / 廃棄物 / ゴミ / 都市と農村 / エチオピア / ニジェール / 循環 / 在来と外来 |
研究実績の概要 |
研究の目的は、現代アフリカに暮らす人びとが日常生活で用いるモノが不用になる過程を人とモノの多層的な関係の様態(=マテリアリティ)と位置づけ、市場経済や近代学校教育の浸透、砂漠化など自然環境の変化にともなってゴミのマテリアリティが変成するメカニズムを解明することである。二年度は、主に学術交流を中心に研究活動を進めた。まず、この研究課題についての基本的な考え方を、主にフランスやドイツにおいて開催された研究集会において発表した。これらの学術交流を介して、この研究で対象とする自然環境の捉え方や、人と自然環境との関わり方といった本研究の視点を深化させることができた。さらに、2019年8月にアジスアベバ大学において開催されたボルドー大学との戦略会議では、持続的な都市に関わるセッションにおいて、今後の研究連携の可能性を模索した。さらに、2019年11月にはアジスアベバ大学社会人類学部講師とともに研究セミナーを共同開催し、この研究テーマについて今後の研究連携の可能性について議論した。日本国内では、この研究課題について、京都人類学研究会(関西圏の大学に在籍する研究者・院生が組織)と共催して、2019年12月13日に季節研究会を実施した。この会では、廃棄物に対する歴史学的なアプローチに立った発表に対し、文化人類学者や環境保全工学者をコメンテーターとしてむかえ、この研究課題への学際的なアプローチの重要性を参加者たちと共有した。上記に加え、ニジェールやエチオピアにおいて引き続き現地調査を継続した。エチオピアでは、在来・外来、耐久財・消費財に加えて、村の保健所に勤務する保健普及員に同行しながら、住民による汚物処理をはじめ衛生に関わる人々の行動についての予備的な調査にも取り組んだ。2018年に参加した国際学会での研究発表を英文学術誌にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年度目の研究活動を終えて、以下の点で本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。本研究は、比較的湿潤な気候であるエチオピア高地を中心とした東アフリカと干ばつが頻発するニジェールを中心とした西アフリカを主な調査地域とし、在来・外来および耐久性を基準に分類した次の4類型が、ゴミとして不用になる過程とその物質的な循環を比較検討する。(1)在来非耐久財:地縁技術(在来素材を用い身体化された技術)により作りだされたモノ、(2)在来耐久財:地縁技術により製作されたモノ、(3)外来非耐久財:近代的技術(外来素材を用い大量生産をめざし規格化された技術)により生産されたモノ、(4)外来耐久財:近代的技術により生産されたモノ。加えて、学術交流や成果発信などを重ねることにより、ゴミ概念を再検討することも目指している。 研究プロジェクト開始後、前述した項目にそって現地調査を継続していることに加えて、エチオピアにおいて保健普及員が実施する公衆衛生についての住民への指導の仕方について予備的に調査をはじめた。これは、罹患に関わる「汚い」「感染る」という考え方とモノを不用と捉える過程との関連性について文化社会的な側面をふまえて理解する試みでもある。この点については、研究の進捗にあわせて、適宜分析対象に加えていくことも検討している。 本研究課題の二年目に入って再認識したのは、廃棄物に関わる環境問題は、一つの国だけにはおさまらないグローバルな課題であると同時に、人々の生活や文化的な行為に直接的に関わるローカルな事象でもある点だ。これについては、日本国内や調査地域のある国ばかりではなく、国際的な集会や分野を超えた学術集会などに参加して、研究成果を発信し学術交流を続けていくことが重要と考えている。この点において、二年度目は、活発な学術交流ができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度末から新型コロナ感染症が深刻化してきたことにより、2020年度は現地調査が十分に実施できないことを想定している。このため、学術交流(インターネットテレビ会議システムを活用した研究会の実施)と成果発信を中心にして、研究活動を進めていく予定である。 これまでの現地調査の結果を、本研究プロジェクトメンバー間で共有するためインターネットテレビ会議システム(zoom)などを介して不定期に研究会や打ち合わせの実施を予定している。これに加えて、東南アジアやアフリカにおいて廃棄物を処理する人びとを対象にして調査研究している大学院生にも参加してもらってzoomなどを活用した研究会を実施することも検討している。アジアやアフリカにおいて、モノが不用なモノになっていく過程において、社会・文化的な影響がどの程度作用しているのかを具体的に検討し、今後成果集をまとめるための比較の視点を模索する。 これまでこの研究プロジェクトの成果は、個別のウェブサイト上で発信してきたが、今年度はこれまでの成果をまとめて閲覧できるようなウェブサイトを構築する。またそのサイトを活用して、研究成果を不定期に発信して行く予定である。さらに、各メンバーが二年度までの研究成果を個別の論文として準備を進める。
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