研究課題
新型コロナ感染症拡大の影響を受け、現地調査を実施できなかったため、アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の文化資源に関する文献調査および現地調査結果の公表を重点的に行った。国内在来トウガラシ品種の類縁関係をWaxyおよびG3PDH遺伝子座の配列解析により行ったところ、北海道の札幌大長および青森県の清水森ナンバが他の日本在来トウガラシ品種とは異なる遺伝的背景を持つことを明らかにした。また、ミャンマー北西部ナガ族の在来トウガラシ品種の遺伝資源評価および他品種との類縁関係をWaxy遺伝子座で明らかにした。さらに、先行研究においてトウガラシの非辛味品種において発見したCaKR1の変異を有する品種を遺伝資源の中から探索し、同様のCakr1変異アリルを有する品種はいずれもボリビアやペルーを起源とすることを明らかにした。そして、葉緑体ゲノム配列を決定し、キダチトウガラシの系統間で塩基多型を比較した。加えて、トウガラシ属植物約750系統のRAD-Seq解析を実施した。少種子性を示すトウガラシ変異系統についての遺伝解析の結果も報告した。辛味については、鳥取県在来トウガラシ品種三宝甘長の辛味制御機構を明らかにした。また、今年度に得られたデータについては、国内外における学会発表や国際誌の論文として来年度公表する予定である。研究成果については、国際会議で1件および国内学会で13件発表し、査読付き論文を7件公表し、単著を1件発刊し、分担執筆を2件担当した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、現地調査を実施できなかったが、文献調査や実験研究に重点を置いた計画に変更したため、研究が進んでいるといえる。また、国内外における学会発表、査読付き論文の公表、単著の執筆および分担執筆がなされており、おおむね順調に進展している。
アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の民族植物学的な現地調査については、依然として新型コロナ感染症拡大の影響で調査の目途が立たないため、文献調査および現地調査結果の公表を重点的に行う。引き続き日本の在来品種と海外の主要品種との類縁関係を明らかにすることで、伝播経路の解明を行う。また、ネパールの在来品種ダレ・クルサニ系統群の種分類を確定し、ミャンマー北西部ナガ族の在来品種シェーランボーと他地域のハバネロ類との類縁関係を明らかにする。本年度得られた葉緑体ゲノムの塩基多型情報に基づいてマーカーを作成し、キダチトウガラシの系統群内における変異の有無を調査する。また、トウガラシ属植物の果実の辛味、香り、形などの嗜好性に関する形質の研究を継続する。そして、基礎解析のみ終了したRAD-Seqを用いて、原産地および東南アジアにおけるトウガラシ属植物の大規模分子系統解析を進めていく。最終年度であるため、研究のとりまとめを行うとともに、研究成果を国内外の学会において随時発表し、論文を執筆する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
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