研究課題/領域番号 |
18H03452
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
倉田 徹 立教大学, 法学部, 教授 (00507361)
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研究分担者 |
曽根 康雄 日本大学, 経済学部, 教授 (00459851)
倉田 明子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20636211)
澤田 ゆかり 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50313268)
村井 寛志 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (60409919)
廣江 倫子 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (90361849)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 香港 / 中国 / 民主化 / デモ / 抗議活動 / アイデンティティ / ナショナリズム / 経済統合 |
研究実績の概要 |
2019年度は本研究プロジェクトの2年目にあたり、当初の計画通り、国内と香港での研究の本格実施の段階に入った。国内では年度内にメンバーによる研究会を合計8回開催し、関連する文献の精読や、研究成果の共有を行った。また、夏季休暇を利用して、代表・分担メンバーや研究協力者で香港現地調査に赴いた。訪問期間中に香港では大規模かつ長期的な反政府抗議活動が発生した。滞在中のメンバーはデモの現場での視察や、抗議活動参加経験者への聞き取りなどを通じて、反政府感情の原因について、当事者の感覚を理解することに努めた。その他にも多くのメンバーが学会参加や11月の区議会議員選挙の視察のため香港に渡航した。 当初は2020年3月に、香港から3名の研究者を招聘して公開シンポジウムを開催することを計画したが、新型コロナウイルス肺炎の拡大に伴い、開催延期を余儀なくされた。同種の活動は2020年度にも行うことができず、香港からの最新の書籍の購入などを代替手段として現地情報を求める形へと、研究計画の変更・調整を余儀なくされた。 他方、抗議活動に関連して日本社会でも香港研究への関心が急速に高まったことから、本プロジェクトのメンバーが中心となって、論文集『香港危機の深層:「逃亡犯条例」改正問題と「一国二制度」のゆくえ』を、東京外国語大学出版会から緊急出版し、それに関連して2020年1月には公開シンポジウムを東京外国語大学にて開催するなど、多くのメンバーが論文や書籍、学会発表などの形で研究業績を公にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の交付申請書に記載された研究実施計画では、国内での研究会の実施、香港での現地調査、香港からの研究者の招聘とシンポジウムの開催を本プロジェクトの柱とした。このうち、招聘については新型コロナウイルス肺炎の流行により、経費の次年度繰越を行って延期実施を模索したものの、実施できなかった。一方、国内での研究会については計画通りに開催し、研究代表者・分担者に加えて多数の研究者や大学院博士課程学生を招いての研究活動・意見交換の場として大いに機能した。 香港現地調査においては、社会科学・人文科学のそれぞれの分野でメンバーが構築してきた人脈を活用し、政界・学術界の香港著名人や、日本との関わりの深い人物を中心に、各メンバーがそれぞれの分野でこれまでに接触してきた、地元の研究者 ・政界人・経済関係者・メディア関係者をメンバーで訪問した。特に、研究者および政界人との間では、深い人脈を構築することができた。また、各自図書館や書店等を利用して文献資料の収集にも努めた。 そして、研究業績の公開は、当初の計画を上回るペースで、積極的に実施されている。2019年2月に開始された香港政府による「逃亡犯条例」改正の動きに対し、香港社会内部での反発が急速に高まり、6月に抗議活動が大規模化した後、衝突は激化しながら長期にわたって継続された。日本社会でも本研究に対する関心が大いに高まり、要請を受けてメンバーが研究成果を披露する機会が急増した。情勢および研究の実施内容は当初予想とは多少異なる展開となっているが、全体としての研究の進展も予想を超えて進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国内での研究会開催・香港に渡航しての現地調査・香港からの研究者の招聘を中心に研究活動を実施する方針である。特に、2019年に発生した抗議活動の後の香港の動向や、2020年度以降予定されている多くの選挙の分析は、本プロジェクトにとって非常に重要なものとなるため、重点的に実行する。 一方、新型コロナウイルス肺炎の流行と、香港の政治情勢の緊張・学術の自由の後退により、相互の往来および現地での聞き取りや図書館での情報収集などが従来通り自由にできるか否かについて、憂慮すべき状況となっている。このため、必要に応じて、現地の研究者に書籍の購入や社会調査の実施などを委託するなど、多様な方法を用いてこれを補完し、研究の質を落とさないよう模索して行く。 日本と香港の間の往来が自由になった際には、香港からの研究者招聘を速やかに実施し、現地情勢について聞き取りを行うことに加え、可能な限り公開の形で講演会等を開催したい。
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