研究課題/領域番号 |
18H03454
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松田 正彦 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60434693)
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研究分担者 |
富田 晋介 名古屋大学, 環境学研究科, 特任准教授 (60378966)
廣田 勲 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50572814)
山本 宗立 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (20528989)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農村生業 / 農業生態 / 農外収入 / 不確実性 / 自然のハザード |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東南アジアの生業・農業の現代的変化を分析する枠組み(熱帯農業理論)を構築し、脱農業化が農村生業と農業技術に与える影響を解明することである。具体的には、様々な生態環境下で非農業部門の相対的重要度が増した農村で現地調査を実施し、農業体系・技術の変化を明らかにする。特に干ばつや洪水などの自然のハザードへの対処機能(熱帯農業に共通する特徴)に着目して、生態環境の異なる調査対象地(群)の生業・農業動態を可視化および比較分析する枠組みを構築する。これを用いて現代東南アジアの脱農業化と農業化の併存状況のメカニズム解明を目指す。 計画2年目の2019年度は、東南アジアの代表的な生態区分(デルタ部・平原部・山地部・島嶼部)のうち、特に島嶼部に焦点をあてた。インドネシア・マルク州アンボン島の農村部で、研究代表者と分担者らによる合同調査を実施し、農村生業と農業技術の現代的変化について住民らに対する聞き取り調査をおこなった。同地域内でナツメグなどの香辛料、ドリアンなどの果樹、あるいはサゴヤシやキャッサバなどの根栽類といった複数作物を組み合わせた伝統的アグロフォレストリー体系である「ドゥスン(Dusung)」を対象に研究をすすめた。その結果、ドゥスンが香辛料の商業的栽培と自給的な主食作物栽培の組み合わせで成り立っており、数百年に及ぶとされる歴史のなかで、人びとが求める作物を次々に組み入れ、また手放すことを可能にした農業生態的な許容力を特徴とすることがわかった。また、香辛料の価格変動や収穫量の変動、主食の変化に対応すべく、多作物からなる柔軟な農業システムとして安定的に営まれていることが示唆された。一方で、ドゥスンの基本的情報(面積や増減)も十分に把握されておらず、今後も調査・研究が必要である。また、今回の合同調査を通じて、計画全体において農業の自給的側面への着目の重要性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は島嶼部での合同フィールド調査を実現することができた。コロナウィルス感染拡大の影響により3月に予定していた補足調査は実現できず、土地利用データによる分析に切り替えて補うこととした。(結果的に次年度である2020年度計画は大幅な内容変更を余儀なくされたが、2019年度計画の終了時点としては上記の進捗状況区分が適当であると判断した。)
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今後の研究の推進方策 |
計画3年目(2020年度)には研究対象地域のうち山地部(ラオス)を主対象として、研究代表者と分担者による合同フィールド調査をおこなう予定であった。この合同調査では、同地域における農業体系や生業変化、ハザード被害現象について共同で調査した上で、地域固有の文脈や研究対象地域間の質的な相違についての検討をすすめる。具体的には同地域の焼畑農業システムや比較的乾燥したエリアの天水畑作システムの現代的変化に着目する予定であった。コロナウィルス感染拡大の影響により、結果的に上記計画は2021年度に持ち越している。 一方で、各研究対象地域での個別研究をすすめていく。また、オンライン研究会を通じて研究組織内での情報共有と理解深化を高め、各対象地域での調査手法と獲得データの標準化や複数事例を統合し、総合考察をスムーズにおこなうための基盤を整備していく。さらに、研究組織で議論を重ねながら、共著論文執筆や学会・研究会の共同発表などのアウトプットをおこなう。
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