研究課題/領域番号 |
18H03457
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山田 浩久 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00271461)
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研究分担者 |
初澤 敏生 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10211476)
中澤 信幸 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (30413842)
櫛引 素夫 青森大学, 社会学部, 教授 (40707882)
岩動 志乃夫 東北学院大学, 教養学部, 教授 (60221074)
吉田 樹 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60457819)
山口 泰史 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (70618305)
宮原 育子 宮城学院女子大学, 現代ビジネス学部, 教授 (80295401)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 観光の組織化 / 地域構造 / 地域交通 / 地域経済 / 観光客誘致 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
本研究では、時代ごとに観光と地域との関係を説明する静態的なメカニズムが存在し、それが観光の組織化(観光に関わるステークホルダー間の機能的な関係強化)によって動態化されると考えており、分析は、この仮説を、観光行政、地域活動、人口動態、地域産業、交通、中心市街地、インバウンドを考える視点から具体的に設定し、それを統計解析や現地調査によって検証するという形で進められる。この仮説検証から得られた知見をもとに、中長期的な観点から見た地域構造の変容を予測し、地域を持続可能な成長に導く次世代の観光戦略を提案することが本研究の目的である。 2019年度までの研究によって、観光の組織化に関する知見や観光の組織化と地域構造との関係に関する知見を広げることができたため、2020年度は、上記仮説の検証を行う予定であった。しかし、COVID-19のパンデミックによって,東北地方におけるインバウンド旅行者の最大の発地国(地域)となっている台湾での現地調査が不可能になったことや国内においても長距離の移動を控えざるをえない状況に陥ったことから、東北地方の観光に対するCOVID-19の影響を身近な地域を対象にして明らかにする研究を進めるべきと考え、研究計画を変更することにした。そのため、各分担領域に対する研究の方向性を確認するための勉強会を開催し、その一部を経済地理学会北東支部例会及び日本観光研究学会北東支部大会で報告した。 この方向性に基づき、研究代表者の山田は、2回の学会発表を行い、図書1、論文4を公表したほか、研究分担者の吉田(発表4、論文5、図書1)、初澤(発表6、論文5、図書3)、櫛引(発表5、論文4)、宮原(発表8、論文1)、山口(発表3、論文3、)、岩動(発表1、図書1)もそれぞれの分担領域における研究成果をまとめることによって、本研究の考察にCOVID-19による影響を取り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19のパンデミックによって,2020年度に予定していた台湾調査を中止せざるをえなくなったこと、さらには国内での研究においても長距離の移動を伴う調査が難しくなったことで、本研究の研究計画に大きな遅延が生じたことは否めない。COVID-19による影響を一過性のものと捉え、2019年までの実態調査で得られた結果からPost COVID-19における観光戦略を提案することも話し合ったが、COVID-19による観光の減退は、今後パンデミックが終息していくにしても、ホスト、ゲスト双方に観光に対する新たな規範の必要性を認識させたことは明らかであり、観光の捉え方やあり方を大きくかえることになるため、設備が修復されたら観光客が戻ってくるというような災害による観光の減退とは異なる視点でCOVID-19の影響を分析し、本研究に取り込んでいくべきであるという点でメンバーの意見が一致した。 そのため、当初の研究計画では予期していなかった観光に対するCOVID-19の影響に関する調査分析を新たに研究計画に組み込み、結果的に論文18(メンバーの共著論文は1本に換算)、発表29、図書6という成果を残すことができた。2019年末に始まるCOVID-19のパンデミックによる影響については、未だ数的なデータが整備されておらず、上記研究成果の多くは、速報的な内容にとどまっているものの、観光のパラダイムシフトとも考えられる激変を社会、学会に示すことができたと考える。また、本研究に目的からも、そうした激変に関する考察を加えたことで、より現実性の高い次世代観光戦略の提案に繋がっていくものと確信する。これらの点を鑑み、現在までの進捗状況に対して、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、COVID-19のパンデミックによって、台湾での現地調査を中止せざるをえなかったが、台湾は東北地方における最大のインバウンド旅行者発地国(地域)であり、台湾の旅行会社あるいは住民(潜在的旅行者)から見た日本観光の動向は可能な限り明らかにしたい。また、本研究でいう「次世代観光戦略」には、来訪者を受け入れるホスト側の対応だけではなく、旅行者を送り出すゲスト側の対応も含まれており、観光交流による相互の発展を目指すものであるため、日本からの台湾旅行者が求める台湾の観光資源や移動手段の整備状況を明らかにすることも重要となる。 しかしながら、日本と台湾の出入国制限が緩和され、海外現地調査が可能になるまでには相当の時間を要することが予想される。また、渡航できたとしても、聞き取り等での接触には細心の注意が必要になるため、予定している調査方法を採用できない可能性もある。そのため、2021年度は、海外現地調査の準備を進めるのと併行して、東北地方の観光に対するCOVID-19の影響を明らかにする研究の精緻化を図り、各分担領域における研究の統合的考察を進めていく予定である。 2020年度は、渡航が難しくなることが判明していたため、予め予算配分を制限して研究費の弾力的な執行に心がけ、海外現地調査のための費用を2021年度に繰り越したが、2021年度も渡航できないということも十分に考えられる。2021年度もCOVID-19の感染状況を注視することによって、渡航の可否をできるだけ早くに判断し、優先すべき研究をメンバー全員で協議していきたい。本研究の研究期間の問題もあり、計画を先送りすることにも限界があるが、COVID-19の影響を本研究に取り込むことはメンバーの総意であり、研究期間の延長も考えながら、研究目的の達成を目指す所存である。
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