今後の研究の推進方策 |
持続可能な地域ガバナンスの方策の実践的アプローチとして、SDGsとも密接に関連するGSTCの「持続可能な観光地評価基準」(GSTC-D)を例に、観光によるSDGsへの貢献、その評価方法について検討する。GSTC-Dは、信頼性あるデータに基づきながら単に数値に頼らず地域の包括的な理解の推進を目標としている。マネジメント(分野A)、経済(分野B)、社会・文化(分野C)、環境(分野D)の4分野、計38項目からなり、それぞれがSDGsと関連づけられている。特にアジア地域のニーズに沿い、伝統的価値を反映し得る項目、その指標に注目する。 1) 多様性(GSTC-D指標B5, C1, 2, 3); SDG5, 11: 社会的弱者支援 (少数民族、女性、社会経済的弱者、高齢者、障がい者、マイノリティ)。多様性に関与する項目を通して、地域レジリエンスを考察する。 2)環境変化への対応 (GSTC-D指標D1, 3, 5, 6, 12; SDGs 11, 12, 13, 14, 15)。 気候変動、多様性喪失など、環境危機への対応に伝統自然資源利用(農林水産)の従事者が持つ知識、技術、倫理観、環境変化の観察などを重視し、特に、現地の歴史、生態系に熟知する人々の関わりに注目する。 3)無形文化(GSTC-D指標B5, B8, C1, 2, 3; SDGs 5, 11, 12, 16, 17) 。地域コミュニティのアイデンティティとしての無形文化(伝統知、技術、祭事等)は、地域環境と人、人と人とのつながりを維持する基盤、地域の多様性を育み、重要な観光資源ともなる。また、文化継承は、地域社会の理解、コミュニティの発展にリ-ダーとして寄与する人材育成の機会ともなる。これらの視点をもとに、観光を手段としての地域ガバナンスが持続性にどのように寄与するかを検討する。
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