研究課題/領域番号 |
18H03461
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
安武 敦子 長崎大学, 工学研究科, 教授 (60366432)
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研究分担者 |
大月 敏雄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80282953)
谷口 尚弘 北海道科学大学, 工学部, 教授 (80337013)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 震災遺構 / 近代化遺産 / 負の遺産 / キリシタン / 噴火 / 地震 / 炭鉱 |
研究実績の概要 |
本研究は現存する負の遺構を収集,分析・評価し,さらに遺構が表現できていない事象を検討しながら,負の遺産の保全を学術的に整理したうえで,持続性の観点から経済波及効果や教育効果,生きがいの創出など,活用や維持管理を含めたまちづくりの観点を加えて検討することを目的としている。 今年度は雲仙普賢岳噴火災害や中越地震について整理した後,東日本大震災の震災遺構をめぐる状況について朝日新聞および河北新聞の記事を整理した。また熊本地震や北海道胆振東部地震を視察するとともに,すでに遺構整備が終わっている北海道南西沖地震や有珠山噴火災害、インドネシアのスマトラ島沖地震被災地であるバンダアチェ,ムラピ山噴火災害被災地のジョグジャカルタについて、役所や地元大学研究者からヒアリングを行い、保存までの経緯や現在の活用方法、その課題について情報収集した。 遺構の活用は、メモリアルな利用のなかにも防災的観点の活用,観光としての活用があり,観光も教育的なものや,直接的な被災者支援(雇用の場)の遺構利用が見られる。このように多義的に活用可能であることが見えてきた。 近代化遺産については福岡県都市圏に位置する国鉄志免炭鉱,明治鉱業高田鉱,早良鉱業,西戸崎炭鉱,三菱鉱業勝田鉱の調査を行った。閉山処理過程を整理した後、その変遷を明らかにした。近代化遺産として評価される前に多くは取り壊され、偶然的に残った遺構が近年、重要文化財となったり、ルート整備などが行われている。 キリシタンの遺構については五島列島久賀島を調査した。久賀島は島全体がキリシタン関連の世界遺産に指定されているが人口減少が著しく、集落維持が困難な地区も見られる。島の維持や島の歴史の伝達を主眼として、キリスト教関連の遺構を活用したまちづくりを支援する住民、外部の支援者、都会から留学児童、自治体職員等の状況を俯瞰し、遺産の持つ価値を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目ごとに進捗を記す。 ① 負の遺産に関する遺構や資料,伝承の調査:予定通り,新聞記事の収集整理,関係者の洗い出しを行い,北海道,インドネシアにてヒアリングを行った。 ② 負の遺産が取捨選択された経緯:予定通り対象地で自治体職員へのヒアリングを通して治世側の経緯を把握した。住民側の動向についてはインドネシアにおいては地元研究者へのヒアリングを行い把握した。 ③ 負の遺産の現在における価値と不足するコンテンツと開示方法:予定通り調査対象地での残存状況や開示方法を整理した。 ④負の遺産の経済波及効果と維持管理コスト:国内の調査対象地で決算書類などを入手したが,インドネシアでは概要しか把握できなかった。ヒアリングからの調査は難しそうであり,現地と連携し資料調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はこれまで収集した個別のデータをもとに,負の遺産の伝承の内容,管理運営,地域への効果を横断的に分析し,評価指標を検討する。評価指標の検討を軸に調査データの不足を精査し,調査は予定している国内の近代化遺産と災害遺構における雇用状況や経済波及効果を中心に実施する。 またこれまでの災害遺構に関する研究を整理し学術誌に投稿する予定である。
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