研究課題/領域番号 |
18H03468
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡辺 賢一 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30324461)
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研究分担者 |
山崎 淳 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10436537)
柳田 健之 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20517669)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子シンチレータ / 混合粉末 / 透明シンチレータ |
研究実績の概要 |
当該年度は、1)微粒子コンバータ・シンチレータおよび透明材の充填方法・比率の最適化および2)新規シンチレータ材の探索のうち、2)の新規シンチレータ材の探索を重点的に実施した。 2)の新規シンチレータ材の探索としては、新しい混合粉体としてLiF-GAGG,LiF-Tl:CsI, LiF-Eu:CaF2, LiF-Sm:SrCl2混合粉末シンチレータを作製し、その中性子応答を評価した。LiF-GAGGに関しては、明瞭な中性子応答を示すことを確認すると共に、当グループで開発に携わってきたEu:LiCaAlF6シンチレータと比べ、短い発光減衰時定数を示すことがわかった。LiF-Tl:CsIについても、明瞭な中性子応答を示し、かつEu:LiCaAlF6と比べ、高い発光量を示すことが分かった。LiF-Eu:CaF2については比較的高い光透過率を示し、波高分布中に中性子に起因するピークあるいは肩構造を示すことが分かった。LiF-Sm:SrCl2については、赤色発光を示す中性子シンチレータの候補となることが分かった。また、TRUST Eu:LiCaAlF6の代替材料として透明シンチレータと透明樹脂の組み合わせについても、再度検討を進めることとした。事前検討として、集光効率の悪い光ファイバ集光光学系と比較的発光量の高くないLiガラスシンチレータの組み合わせについても試験を行い、中性子ピークを示すことがわかった。今後TRUST Liガラスシンチレータについても試行していく予定である。 当該年度の検討により、いくつかの大判中性子シンチレータの候補が見いだせた。今後、これらの大判化に重点を置き、さらなる検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実施内容に関して、特に2)の新規シンチレータ材の探索について順調に進展していると判断した。 2)新規シンチレータ材の探索としては、まずは新しい組み合わせを複数試行し、中性子感度が得られることが確認できた。その中で、発光量の高いもの、減衰時定数が短いもの、赤色発光を示すものと、バラエティに富んだ新規シンチレータを見出すことができた。加えて、透明中性子シンチレータと透明樹脂の組み合わせでも、新たな特性のシンチレータを見出せる見込みが得られた。 1)微粒子コンバータ・シンチレータおよび透明材の充填方法・比率の最適化については、若干遅れているところもあるが、この点を強化し、最終的な大判シンチレータの開発に繋げられるよう研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、中性子コンバータであるLiFとシンチレータの混合体を中心に、中性子ピークを示す新たな中性子シンチレータの実現を目的に研究を進めてきた。しかしながら、必ずしも中性子ピークを示さなくても、中性子イメージャとして機能する点、高速応答を示すシンチレータの利点もあることから、当初の目的のみにこだわらず、広く材料探索、候補の試験の範囲を広げていく方針とした。 次年度、最終年度であるため特に大判シンチレータの実現を念頭に置き、広い選択肢の中から有望、有用そうなシンチレータ材料を選択し、プロトタイプ検出器を試作する予定である。候補の一つとしては、透明中性子シンチレータであるLiガラスと透明樹脂を組み合わせた透明樹脂型シンチレータが挙げられる。これは高速応答を示し、従来の透明樹脂型シンチレータであるTRUST Eu:LiCaAlF6と比べ、高計数率対応が可能という利点がある。また、α/βの比較的高いTl:CsIとの組み合わせも候補の一つとなり得ると考えている。
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