研究課題/領域番号 |
18H03475
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
原田 研 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (20212160)
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研究分担者 |
森 茂生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20251613)
児玉 哲司 名城大学, 理工学部, 教授 (50262861)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不確定性原理 / 二重スリット / 電子波干渉 / 電子相関計測 / 遡及計測 |
研究実績の概要 |
本研究は、量子力学の根幹を成す『不確定性原理』を明らかにすることに挑戦する二重スリットの実験提案である。具体的には、波として二重スリットを同時に通過した電子の干渉現象において、粒としての電子(単電子)を検出し、各々どちらのスリットを通過したのか、伝搬径路を遡って判別することを目指している。 理研チームは、二重スリットの2つのスリットを通過した電子波を混在させないために、電子線バイプリズムを併用し、伝播距離ゼロの干渉光学系を新たに考案・構築した。あわせて、V字形状の二重スリットを作製し、このV字型二重スリットを通過する各々の部分によって、干渉前、干渉中、干渉後の3領域を同一条件で計測する干渉実験を進めている。 大阪府立大チームは、現有するLaB6熱電子顕微鏡と熱電界放出型電子顕微鏡に、新規に電子線バイプリズムを導入し、それぞれ干渉縞の発現を確認している。さらに、磁性体材料の観察において、ホロコーン照明法(円環絞りを用いた照明法に該当)を実施し、磁区と磁壁の両方を同時に観察できるホロコーン・フーコー法の開発に成功した。 名城大チームは、これまでの計測データから単電子分布像の統計的相関計測アルゴリズムを構築し、それを用いた解析によって単電子分布とポアソン分布のずれを検出した。この結果は、実験に用いた単電子検出カメラの性能、及び、データ転送時のノイズに由来するものと推定しているが、詳細については現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな干渉光学系等の実験条件を考案し、その構築に成功するとともに、統計的相関解析プログラムの開発とそれを用いた実験データの解析を進めている。また、熱電子顕微鏡への電子線バイプリズムの導入を完了し、新しい電子波照明法としてホロコーン・フーコー法の開発に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通り、新しいアイデアを盛り込んだ二重スリット実験を実施し、質量を持った粒子である単電子による干渉実験から量子力学の根幹を成す『不確定性原理』を明らかにする挑戦を進めて行く。 理研チームでは、低ドーズの単電子干渉条件のもと、3条件(干渉前、干渉中、干渉後)の同時計測を実施し、電子による量子消去実験(Quantum Eraser)を目指す。また、昨年度には搭載カメラの不調により実施できなかった低ドーズ条件(<0.02electrons/pixel)での干渉計測を目指す。 大阪府立大学チームでは、電子線バイプリズムを搭載した電子顕微鏡を用いて、可干渉性の制御とその計測実験を試行し、ホロコーン照明法を用いた応用研究を検討する。 名城大学チームでは、実験データから検出されたポアソン分布からのずれの原因を究明し、理研チームおよび大阪府立大チームの実験にフィードバックするとともに、今後の3条件(干渉前、干渉中、干渉後)同時計測実験データの統計解析を実施する。さらに、ホロコーン照明を干渉実験に導入するための円環絞りを用いた電子波照明光学条件について検討を進める。
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