研究課題/領域番号 |
18H03485
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
田中 直人 島根大学, 総合理工学部, 客員教授 (60248169)
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研究分担者 |
後藤 義明 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70461209)
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
大森 清博 兵庫県立福祉のまちづくり研究所, その他部局等, 研究員 (90426536)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 逆行性喪失行動 / 居住環境デザイン / BPSD / レミニセンス |
研究実績の概要 |
本研究では認知症高齢者の逆行性喪失による言動・行動やBPSD(行動・心理症状)にも配慮した居住環境の検討として、逆行性喪失の入居者には、言動や行動を“肯定”するため、過去の経験を擬似体験できる場を、BPSDのある入居者には、一定の領域性を確保したカームダウンの場を導入した『逆行性喪失行動およびBPSDの緩和を誘発する居住環境デザイン手法』を構築する。そして導入前後の認知症高齢者への効果を、生体センサーから得たストレス度の変化により検証することで、高齢者生活環境改善の実現に向けた基礎的知見を得ることを目的としている。 令和1年度では平成30年度に実施した、「カームダウン空間手法の有効性に関する特養職員意識調査」結果、及びこれまでの海外先進事例調査結果を踏まえ、「カームダウン空間」ユニットを実験装置として作成し、検証実験を実施した。 検証実験は、特別養護老人ホームに入居する、「自身の意思で移動可能であり、且つ単独でエレベーターに乗り異なるフロアに移動可能」な軽度認知症高齢者3名を対象に「カームダウン空間(以下、実験装置)」設置前後の心理状態変化の有無について検証した。実験装置は2台作成し、フロアの異なる共用空間であるエレベーターホールに設置した。実験装置側にはビーコン用レシーバーを設置し、被験者がいつ、どのくらいの時間近づいたか(滞在したか)を確認した。被験者側にはビーコンとリストバンド式生体センサーを装着してもらい、心理状態をはかる参考値として脈拍を計測した。併せて検証スタッフによる行動観察も行った。 現在はデータの分析中であるが、令和2年度で予定している「経験擬似体験空間」ユニットによる検証実験実施に向けた調整等が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度に実施した「カームダウン空間」検証実験は、本研究で計画している2つの視点にもとづく検証の内のひとつである。その目的のひとつに「認知症高齢者を対象とするデータ取得方法の検証」がある。本実験では、① ビーコンによる実験装置滞在状況の把握、② リストバンド式生体センサーによる被験者心理状態をはかる脈拍の計測、③ 検証スタッフによる行動観察調査による行動の把握、の3方法でデータ取得を試みた。各取得データの分析については現在進行形であるが、データ取得方法については、一部見直しの方向で調整を終えた。 令和2年度実施予定の「経験擬似体験空間」検証実験については、検証方法の計画作成する準備は整っていることから、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度研究の主となる「経験擬似体験空間」検証実験の実施については当初、夏~秋の実施に向け、今春、実験現場となる特別養護老人ホームとの調整を行う予定であった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、近々までの緊急事態宣言による外出自粛と、特養側の受け入れ自粛を受け、調整は行われていない。また予定の検証実験では被験者となる特養入居者との接触が必要であることから、検証実験実施の時期についても未定である。 一方、検証実験準備が可能になった際には、令和1年度実施の検証実験同様、施設側との綿密な調整を行うが、以下の点が予想される。 ① 被験者が認知症高齢者およびその居住施設であるため、実験装置の安全性にかなりの配慮が必要となり、計画内容の再現性が限られることが予想される。またその調整に要する時間が発生することも予想される。 ② 「経験擬似体験空間」ユニットの有効性をはかるデータ取得方法について、被験者である認知症高齢者に対し妥当な方法であるかどうかの事前検証が必要となる。併せて被験者の変更等の発生や、データ取得方法の再検討など、その調整に要する時間が発生することも予想される。 以上の予想理由から、①については、専門家による多角的な安全確認を実施することで、より計画内容の再現性を保つ様に努める。②については、事前に被験者候補を多く予定することで、実験途中の被験者再調整による時間のロスを無くすよう努める。
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