研究課題/領域番号 |
18H03490
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
土田 義郎 金沢工業大学, 建築学部, 教授 (20227424)
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研究分担者 |
高野 佐代子 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 講師 (10374117)
上田 麻理 (平栗麻理) 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (70786409)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 注意 / 防災放送 / アナウンス / サイン音 / 空間認識 |
研究実績の概要 |
防災放送のアナウンスに関する課題では、テレビ局に在籍するベテランアナウンサーに対して、緊迫感を与えるための話し方に関するグループインタビューを試みた。その結果、抑揚、速さ、大きさについて、文章のメリハリに意識していることが示された。この結果に基づき、全体に対する教示だけではなく、文中の特に注目すべきいくつかの語(特定語)に対して大きさ、高さ、速さが変わるような教示(部分的教示)を与えた比較実験を実施した。その結果、「自然に」という教示を与えたときの評価が低い場合は、その他のどの教示でも評価が高くなる傾向にある。「焦って」という教示語が最も効果が高い。部分的教示は全体的教示とあまり変わらない結果になった。 また、重回帰分析から、文章全体のLmax(声の音圧レベル)と特定語のf0(Hz)(声の高さ)は「逃げる気になる」とは関係性が低い傾向が見られ、速さは早すぎても遅すぎても逃げる気にならないという傾向が見られた。重回帰分析の結果から最も「逃げる気になる」との影響度が高いのは、特定語のLmax(dB)であり、「逃げる気になる」との影響度が高いのは全体のf0(Hz)であるという結果になった。 サイン音に関する課題では、分岐点を想起させるサイン音の特性について検討した。オノマトペで分岐点をあらわし、そのオノマトペを楽器によって表現した音を用いて、音に対する印象をSD法によって評価した。その結果、「変動性因子」、「不快性因子」の2つが検出され、変動性の高い音が分岐点を想起させやすいことが示された。さらに、実際に実験空間で再生して歩行することで分岐点位置も認識可能であることも確かめた。 サイン音を再生するハードウエアについても、天井取り付け型のスピーカを試作した。音漏れが生じたり、音色・音量変化が明瞭ではなかったりという問題点がみられたため、引き続き改良を重ねていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
防災放送に関する課題、サイン音に関する課題についてはほぼ予定通り研究を実施できたが、マップアプリを用いた空間の音環境評価に関する課題は進捗させることができなかった。マップアプリを用いることで手軽に空間認識を把握できる可能性があるため、この分野は引き続き検討を重ねる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
防災放送に対する主観的評価については、どのような教示が効果的かを検討した。その結果、先行研究と異なる傾向もうかがえる結果となった。今後は原因と結果について因果関係について統計的な分析を行い、その原因を解明する。 サイン音については、現在、ハードウエアのスピーカ形状を再考し、より効果的なものを実現する。 マップアプリを用いた研究に関しては、主たる分担者の所属機関異動の初年度ということもあり、大きな進展が見込めなかった。次年度以降は腰を据えた研究も見込めることから、研究代表者との打ち合わせを密に行ってゆき、研究を加速させることを心掛ける。
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