本研究の目的は,バクテリアから哺乳類・鳥類に至るまで有している地磁気感受性が,ヒトにも備わっていることを明らかにすることにある.このため,研究計画として,ヒトに地磁気強度の磁気刺激を与え,生理反応(脳波)・行動反応を計測しその証拠を探す. 2年目である2019年度は,行動実験の条件出しを行った.基本戦略は,被験者に対し水平から前方に40度程度傾いた軌道上を振幅一定(地磁気強度)で左右回転する磁界刺激と,正面水平に設置した60個のLEDアレイを用いた左右移動視覚刺激のStroop効果を起こさせることである.予備実験では,Stroop効果と視覚のプライミング効果がトレードオフの関係にあるようであり,プライミング効果を低下させる条件出しに長く時間をかけた.しかし,プライミング効果を抑制することはできたが,Stroop効果を増大させることはできなかった.おそらく,コンフリクト処理や注意に注がれるリソースが一定であり,プライミング対策もこのリソースを消費しているためであろうと考察した.このため,初心に帰り,年度終わりから被験者数を増やす実験を開始したが,異動があり3月初旬で停止せざるを得なかった. 一方,潜在意識下にあると思われる磁覚の脳内電気信号を増幅する手段である経頭蓋細胞外インピーダンス制御(tEIC)については,その電気回路学的神経作用について定式化を行い,その成果を国内学会で発表した. また,2018年度の論文発表が発端で多くのメディア(つくばサイエンスニュース,リパネス研究応援,BayFM Love Our Bay,毎日新聞,InterFM897 The Dave Fromm Show,岩波書店科学)に出演・掲載され,人間の磁気感受性について一般向けに広く情報発信した.アカデミックには,京都大学花山天文台で講演を行なった.
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