研究課題
言語表現によって変化する非一貫した決定行動の背後にある認知メカニズムを解明するために、コミュニケーションと意思決定に関する認知実験を実施した。その結果、意思決定者は話者が持つ信念を推論していること、またこの推論された信念から話者の言語行動が予測できることが明らかになった。これらの知見から、言語表現によって変化する決定行動は、決定バイアスではなく、話者の信念を適応的に推論した結果を反映したものであることが明らかになった。また、集団意思決定場面において、個々のメンバー間のインタラクションの方法が集団意思決定の合理性に与える影響について、認知実験と計算機シミュレーションを実施した分析を進めた。結果として、コミュニケーション時に話者が特定の表現法を好むバイアスが存在することが明らかになった。そしてバイアスは、集団の意見を集約する際に偏りを生み出す場合があり、結果として集団内の意見の多様性が減少する場合が存在することを示した。以上の知見は、コミュニケーションを視点として意思決定の合理性を分析する際に、様々な側面を考慮した分析が必要であることを示している。例えば、認知バイアス・決定バイアスと考えられるような現象が必ずしも非合理的な意思決定を意味しないこと、個と集団の合理性の違いなど、観察された現象の背後にあるメカニズムを明らかにし、広い視点から分析を進める必要があることを示すものである。また、このような分析は、個人の合理性と集団の合理性がいつ両立し、また逆にいつ両立しないのか、その境界条件について示唆を与えるものである。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
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認知科学
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