研究課題/領域番号 |
18H03511
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関野 正樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20401036)
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研究分担者 |
横田 知之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (30723481)
富岡 容子 (桂木容子) 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20610372)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体計測 / フレキシブルエレクトロニクス / 形成外科 / 組織移植 |
研究実績の概要 |
乳癌を切除した後、術後の生活の質を高めるために、組織移植によって乳房を再建する例が増えている。移植された組織では、 術後一週間にわたり、血栓が生じるリスクが高くなるため、血流障害を即時検出する機器が求められている。本研究では、生体の曲面に貼り付けられるフィルム状イメージャーを試作し,体の表面に貼り付けて、血流状態を観察できることを示す。従来の画像診断装置では、昼夜を問わぬ検査で患者と医療従事者の双方の負担が大きいことに加えて,数時間間隔の観察となり、障害の発見が遅れることがあった。本デバイスは従来技術と異なり、常時観察が可能であり、マッピングにより局所的な血流障害も検出できる点が優れている。 1. OLEDマトリクスの開発:OLEDの各層をパターニングして、発光素子の2次元的な配置を可能にした。デバイスを安定的に作製できるように、材料と有機溶媒の選定を行い、膜厚などの最適化を行った。 2. OPDマトリクスの開発:OPDと整流ダイオードを直列接続して、マトリックスの要素を構成した。構造的に多点計測可能であることを確認するために、ガラス基板上にデバイスを作製して動作確認を行った。 3. イメージャー制御回路の開発:OPDを駆動するための電圧の切り替え、OPDを流れる光電流の計測、OLEDの点灯の制御などを実現する回路を設計・制作した。光電流は1行ずつ読み出していく。行の選択は、各列に印加する電圧を切り替える事によって行った。光電流は微小であるため、信号を増幅しつつ、フィルタによってノイズを低減した。製作した駆動回路の動作確認と予備的な性能評価のために、無機のフォトダイオードと整流ダイオードを組み合わせたマトリクスを用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取り組みの具体的内容として挙げた,OLEDマトリクスの開発,OPDマトリクスの開発,イメージャー制御回路の開発とも,デバイスを試作して動作確認を行うことができ,フィルム状イメージャーの開発に必要な要素技術を確立することができた.これらの成果を,学会などで発表した.
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今後の研究の推進方策 |
1.センサデバイスの開発 フィルム状基板に,OLEDとOPDをアレイ状に実装して,イメージャーを構成する.試作したイメージャーについて,感度,暗電流,ノイズ等の評価を実施する.制御回路においては,OPDを駆動するための電圧の切り替え,OPDを流れる光電流の計測、OLEDの点灯の制御を行う。これらの機能を実現する回路を設計・制作する。光電流は1行ずつ読み出していく。行の選択は、各列に印加する電圧を切り替える事によって行う。VOFFが印加された行の素子にはほとんど電流が流れず、VONが印加された行の列の素子にのみ、受光量に比例した大きさの光電流が流れる。この光電流を各列から読み出す。脈波の測定に必要な60 dB程度のダイナミックレンジと20 Hz程度の時間分解能を有するかどうかを評価する。十分な時間分解能を得られない場合には、フィルタの設計を見直す。この際、時間応答性を上げるとノイズをカットする性能が落ちるため、最適なカットオフ周波数を探索する。駆動回路は、持ち運び可能な程度まで小型化する。 2.健常者を対象とした脈拍のマッピング 健常者に擬似的に血流障害を起こした際の脈拍をマッピングする。健常者の手背に本イメージャーを貼付し、医療用テープにより上から固定する。拍動に伴う生体組織内の後方散乱光の光量の変化を、各点のOPDによって検出する。そして静脈及び動脈を止血帯で止血または圧迫することにより、擬似的に鬱血、虚血を再現する。このプロトコルは、無機光学素子を用いた既存の血流障害特定装置の評価でも用いており、止血や圧迫の間に脈拍が減少し、止血や圧迫を止めると脈拍が元の大きさまで回復することが確認されている。また、臨床での使用を想定した1週間程度連続したモニタリング試験も行い,耐久性や装着感の確認を行う.
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