研究課題/領域番号 |
18H03515
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今井 宏彦 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40506466)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 磁気共鳴イメージング / 核磁気共鳴 / 分子イメージング / 化学交換飽和移動 / ドパミン |
研究実績の概要 |
パーキンソン病をはじめとするドパミン関連疾患の多くは、その発症の原因が解明されておらず、根本的な治療法や早期診断の方法も確立されていない。これらの進展には脳内のドパミンを可視化することが重要であるが、現在のところその技術は存在しない。このような背景のもと、本研究では低濃度分子を高感度に検出するCEST MRIの利用を提案し、MRIを用いたドパミンイメージングの実現を目指している。 生体内分子のイメージングにおいては、対象分子の空間分布を示す定性的な画像の撮影だけではなく、濃度などの評価が可能な定量的な画像の取得が重要である。CEST MRIは、対象分子と周囲の水分子との間で生じる交換性プロトンの化学交換を利用するが、本年度は特に、対象分子の濃度および化学交換速度の定量評価を可能とする計測法および解析法の確立を中心に研究を進めた。 このような物理量を推定する様々な手法が提案されているが、撮影に長時間を要することが課題である。そこで短時間の計測から濃度および交換速度を同時にかつ高い精度で推定する手法の開発を目的に、定量的MRI法のひとつであるMR Fingerprinting(MRF)の手法をCEST MRIに導入したCEST MRFについて、その実現に向けた取り組みとして、撮像パルス系列の設計と撮像条件の最適化手法の探索を行った。適切な撮像パルス系列を判断するための評価手法を提案するとともに、撮像条件や信号雑音比が推定精度に与える影響について計算機シミュレーションを用いて詳細に検証した。そこから得られた知見をもとに設計した撮像パルス系列をMRI装置に実装し、濃度およびpHを変化させた複数の水溶液ファントムを対象に実測による検証を行った結果、提案手法の有効性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内分子のイメージングにおいて重要となる定量画像の取得手法を検討し、短時間の計測から複数の物理量を同時に推定するCEST MRFについて撮像パルス系列に対する評価方法を確立し、実測に基づく検証から提案手法の有効性を確認できており、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ドパミンはその分子構造内に交換性プロトンとしてヒドロキシ基プロトンとアミノ基プロトンの2種類を有するが、このような複数種の交換性プロトンを有する対象に適用可能な定量化手法は未だ確立されていない。本年度に行ったCEST MRFの検討については、系を単純化するためにドパミンではなく1種類の交換性プロトンを有するアミノ酸分子の水溶液を対象とした。そこで今後は複数種の交換性プロトンを有する分子にも適用可能な定量化手法への展開を目指し研究を進める。 一方で、これまでのドパミン水溶液での検討から、生体内環境を想定した条件下ではプロトンの交換速度が高速でありCEST信号の検出が困難であることがわかっている。そこで交換速度が速い対象の撮像に特化したCEST MRI法の検討を並行して進めているが、今後は特に新たな飽和RFパルスパターンの提案とその検証に注力し、生体内環境におけるドパミンイメージングの実現を目指す。
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