研究実績の概要 |
これまで代謝標識によりアジド基を表出させたMSCにPEG鎖を介してVHHを修飾させていたが、クリック反応を2回行う必要があるため、代謝標識によりアルキニル基を表出させたMSCに直接アジド基を導入したタンパク質を修飾する方法を確立した。アジド糖の代わりにアルキン糖を処置し、アジド蛍光色素との反応によりMSCへのアルキニル基の導入を確認できた。さらに、アジド基を導入した蛍光タンパク質mKO2と反応により銅触媒を利用したクリック反応でタンパク質を細胞膜に修飾できることも確認した。これらの一連の操作後の細胞生存率を評価したところ約85%であった。 昨年度の成果を利用して、急性肝炎モデルマウスおよびゲノムPCRを利用した抗体修飾MSCの肝臓への集積量の定量評価を行った。本研究で確立した方法により抗ICAM VHHを修飾したヒト由来MSCを作製し、LPSおよびDガラクトサミン投与により作製した肝炎モデルマウスまたは正常マウスに尾静脈より投与した。1または8時間後に肝臓を摘出し、AluYb8配列を指標にqRT-PCRで定量評価したところ、1時間後にはいずれのマウスの肝臓にもMSCの集積は認められなかったが、8時間後においては、肝炎モデルマウスへのMSCの集積数は正常マウスと比較して有意に高かった。また、8時間後の肝炎モデルマウスへの未修飾MSCの集積量と比較して、抗体修飾MSCの集積量は有意に高かった。8時間後の血清中のALT, ASTを測定したが、有意な治療効果が認められなかった。線維化などの肝再生能の向上が必要な疾患ではMSCが有効である可能性が期待できる。しかしながら、緊急事態宣言による時間制限により、モデル確立に一か月ほどの期間を必要とする肝線維化モデルを用いた治療効果を得るまでは至らなかった。以上、抗ICAM1-VHH修飾によるMSCの炎症肝への集積増大に成功した。
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