研究課題/領域番号 |
18H03517
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
李 鍾國 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (60303608)
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研究分担者 |
坂田 泰史 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00397671)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 細胞ホーミング / YAPシグナル / ストレスファイバー / 脱細胞化細胞外マトリックス / 臓器様三次元心筋組織構築 / 三次元イメージング |
研究実績の概要 |
本研究課題においては、#1 細胞ホーミング機構の解明、#2 細胞基質間接着制御機構の解明、#3三次元臓器の成熟化を促進する因子に焦点をあて、これまでに研究代表者らが確立した脱細胞化細胞外マトリックスを用いた三次元心筋組織構築技術 (Yasui,Lee et al.Biomaterials. 2014) を用い、生体に匹敵する再生心筋組織の創出を行うことを目標としている。本年度は下記研究を実施した。 1)内皮関連因子による自己組織化:内皮関連因子をラット新生仔由来心臓構成細胞に添加すると、細胞凝集による三次元化が促進する現象が認められ、光干渉断層イメージングを用いて生細胞標本で定量評価する方法を調べた。内皮関連因子添加群においては、N-Cadherinをはじめとする細胞接着因子の遺伝子発現の増大が観察され、細胞間接着の亢進が三次元化に寄与している可能性が示唆された。また、同種のiPS心筋と生体心筋が電気的に同期する現象が観察された。 2)新規脱細胞化技術の開発:ラット新生仔心に対する脱細胞化技術開発を行った。従来の界面活性剤単独による方法に比し、界面活性剤と新規糖脂質物質を併用する方法においては、脱細胞後の心臓形態変化が小さく、細胞外マトリックスへの影響が小さいことが示唆された。これらの脱細胞化マトリックスに細胞播種を行い再細胞化心作成実験を進めている。 3)心臓の3次元イメージング技術確立:臓器様三次元心筋組織の形態評価手段として、心臓に分布する交感神経および血管の分布を組織透明化技術により3次元で可視化する技術を確立した。 4)細胞の増殖・遊走関連因子YAP活性とストレスファイバーアクチンとの関連:ディストロフィン欠損デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD) 患者から樹立されたiPS細胞由来心筋細胞を用い形態・機能評価実験をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年6月、脱細胞化細胞外マトリックス作成実験に使用していた安全キャビネット・灌流装置に不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整が必要となり、脱細胞化細胞外マトリックス作成実験の再開までに4ヶ月間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
1)内皮関連因子による自己組織化:内皮関連因子と接着因子の発現分布を、免疫染色法を用いて評価し、自己組織化のメカニズムへの寄与を調べる。また、生細胞サンプルの3次元化が促進する過程を、光干渉断層法によるタイムラプスイメージングを用いて観察する。 2)新規脱細胞化技術の開発:界面活性剤と新規糖脂質物質を併用して作成した脱細胞外マトリックスを用い、再細胞化心構築を行う。 3)3次元組織イメージング技術の応用:臓器様三次元心筋組織の形態評価のため、組織透明化により得られた三次元心筋組織のデータ解析技術を確立する。 4)細胞の増殖・遊走関連因子YAP活性とストレスファイバーアクチンとの関連:ストレスファイバーアクチンの細胞内分子イメージング技術を確立し、iPS細胞由来心筋細胞におけるYAP活性とストレスファイバーの関連を調べる。
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