研究課題
細胞-基質間接着(または焦点接着斑、focal adhesions: FA)の形態を調べるために、A7r5細胞からFAを抽出した。ここで、FAに含まれるvincluinやα-actinin-1などをそれぞれ抗体染色、もしくは蛍光タンパク質標識を行った。倒立型蛍光顕微鏡上に設置した原子間力顕微鏡によるタッピングモード測定により、形状とタンパク質局在の同時測定を行った。その結果、vinculinはFAの下面側に、α-actinin-1が上面側に存在することが確認された。特に、α-actinin-1の局在する位置において、FAの高さがα-actinin-1の長さ(約50ナノメートル)分だけ上昇することが確認された。また、FAに沿ってアクチンフィラメントは平坦に存在していることがわかった。これらの観察結果から、力学的観点に立ったFAのモデルを構築した。ここで、解析モデルおよび有限要素解析に基づき、FAの形状や基質の弾性率が、FAの支える力に及ぼす寄与について検討を行った。その結果、FAは従来考えられているように垂直応力を支えるよりも、せん断応力を支えることに適した構造であることを示した。また補足的な計算を行い、このせん断応力を支えることを前提にしたモデルでは、従来知られているその他の定性的・定量的現象をより的確に説明できることを明らかにした。また、その他のタンパク質、具体的にはα-actinin-2やtalinなどについてもFA内での局在と形態との関係を調べたが、特に相関を認めるには至らなかった。すなわち、FAを構成するいくつかの構造要素において、α-actinin-1だけが特異的に平面的なFAの高さの上昇に寄与し、かつそれによってより大きな力を支えられるとともに、それは主としてせん断応力として維持されることを示した。
2: おおむね順調に進展している
予定していた一連の実験を行い、所期の成果を得つつあるため。
焦点接着斑のナノメートルスケールでの形態と、その構造構築に対する各種構造タンパク質の寄与が明らかにされてきたが、ここまでの結果はあくまで抗体を用いた免疫染色および蛍光タンパク質タグを用いた静止画像観察に基づいている。今後はライブイメージングにより動態観察を行うとともに、力の伝達に関する新しい知見について分子センサーを用いて実証を行うことが課題である。
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PLOS ONE
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http://mbm.me.es.osaka-u.ac.jp