研究課題
前年度までの研究では、細胞-基質間接着(焦点接着斑, Focal adhesion, FA)は、アクチンフィラメントの積み重なった層構造から成ることを見出した。さらに、力学解析に基づき、その微細構造のためにFA内で過度な力学的負荷を防ぐことができること、また、FAの過度な発達を抑制することができることを示唆してきた。これは従来のFAのモデルでは説明のできなかった、定量的かつ合理的なFAの荷重支持メカニズムの説明を与えるものである。さらに、α-actinin-1を含むアクチンフィラメント層にせん断的な力学的応力が負荷されると、α-actinin-1の解離速度が上昇する、と示唆される結果を得てきた。そこで、今年度はこのα-actinin-1のひずみ依存的な解離の生物学的意義を調べる研究を行った。α-actinin-1は離れた2本のアクチンフィラメントを平行な位置関係を維持して架橋する役割をもっている。まず、力学解析に基づいて次のことを計算機上で示した。2本の平行なアクチンフィラメントの長軸方向に引っ張り荷重を与えても、架橋タンパク質のα-actinin-1には力が伝わらない。一方、2本のアクチンフィラメントにせん断的な力、すなわち、両フィラメントを長軸方向に位置をずらすような変形を与えると、α-actinin-1には張力が伝わる。これらの力と変形の関係が実際に細胞内で起きていると強く示唆される結果を得た。具体的には、α-actinin-1の分子交換速度を細胞内で計測し、2本のアクチンフィラメントに相対的な運動がある場合には(α-actinin-1とアクチンフィラメントの複合構造にせん断的な力が作用する際には、すなわちα-actinin-1レベルで張力が作用する際には)α-actinin-1は速く解離し、一方、相対的な運動がない場合には遅い解離速度を示すことを明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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