研究課題/領域番号 |
18H03521
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
坂元 尚哉 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (20361115)
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研究分担者 |
三好 洋美 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (50455367)
伊井 仁志 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (50513016)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 細胞バイオメカニクス / 細胞核 / 細胞骨格 / 細胞内張力 |
研究実績の概要 |
昨年度作製した顕微鏡ステージ上で細胞を伸展できる装置を用いて,細胞伸展時に生じる細胞核内の相当ひずみ分布を詳細に解析した.その結果,相当ひずみは細胞核中心部で最も高く,また辺縁部でも高くなる傾向が得られた.さらに実験で得られたひずみ分布から有限要素解析法を用いた逆解析により相対的な弾性率分布を求めた結果,細胞核内の弾性率分布も不均質であり,特に周辺部で低いことが明らかとなった.アクチンフィラメント脱重合またはヒストン脱アセチル化阻害を施した細胞を同様に実験に用いた結果,細胞核内ひずみの不均質性に対して,アクチンフィラメント構造およびクロマチン凝集状態が影響を持たないことが示唆された.このことは細胞核内の不均質な力学特性に対して,別な細胞内および細胞核内構造因子が重要な役割を持つことを意味する. 主に細胞骨格によって発生する細胞内張力に対して細胞核が構造的に果たす役割を明らかにするため,弾性率の異なる細胞外基質上で培養した細胞の細胞牽引力分布を調べた.その結果,基質弾性率変化に伴い平均牽引力が変化した状態においても,相対的な細胞内牽引力分布が維持されることが明らかになった.また細胞核と細胞骨格の結合を阻害する非機能性架橋タンパク質を細胞に過剰発現させることで,相対弾性率分布が変化した.さらにアクチンフィラメント構造を観察した結果,無処理細胞では細胞辺縁部に発達した構造が顕著であったのに対し,非機能性架橋タンパク質発現細胞ではアクチンフィラメントが辺縁部に加え中央部でも見られた.これらことから,細胞核-細胞骨格結合は異なる弾性基質上における細胞骨格および細胞牽引応力の細胞内分布維持に役割を持つと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞核内部の力学特性分布の違いおよびそれに対する新たな構造因子の役割を明らかにできた.また細胞核が細胞内張力に対して構造的に重要な役割を持つことをし察するデータ収集の行い,概ね予定通り進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
力学環境下における細胞核内ひずみ分布および構造分子発現の時間的変化を調べ,細胞核内力学特性に対して重要な役割を担う構造因子の探求を行う.また細胞牽引力法に加え,細胞核を介して細胞核へ伝達される力の評価方法を導入し,細胞核が細胞内張力に対して果たす役割についてより具体的な検討を行う.さらにこれら細胞核力学状態がポリメラーゼや転写活性因子挙動に与える影響を検討し,細胞生理に果たす役割についても解明を目指す.
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