研究課題/領域番号 |
18H03525
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
片野坂 公明 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (50335006)
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研究分担者 |
永森 收志 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90467572)
金川 基 神戸大学, 医学研究科, 講師 (00448044)
片野坂 友紀 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60432639)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 適応 / 感覚神経 / 筋痛 / メカノセンサー |
研究実績の概要 |
運動後の筋で筋痛が生じにくくなるという筋の適応機序の解明は、筋痛のしくみの理解とその予防に重要な情報を与えるものである。本研究では、筋と神経との関わり合いにより生じるこの適応現象のしくみを明らかにするため、筋の運動適応に関わる分子の同定とその役割の解明を目的として実施した。 本年度は、遺伝子の網羅的解析および特定のタンパク質に着目した個別解析により、運動前後で発現変化する因子の探索を開始した。後肢伸筋群への伸張性収縮運動により遅発性筋痛を発症させた筋痛モデルラットから、運動前と筋痛のピークである運動2日目、および筋痛回復後の運動5日目の後肢筋を単離し、mRNAと細胞膜分画を調整した。前者は逆転写後にDNAマイクロアレイ解析を実施した。その結果、運動前と比べ運動5日後に発現が変動した遺伝子は非常に少なく、変動幅も小さかった。運動2日後には、運動前から発現変動を示す遺伝子が多く、変動が数倍を超えるような遺伝子は限られていた。今後、サンプリングの時期や対照群の再設定等により、関連因子の絞り込みを行う必要がある。一方、細胞膜分画については、筋細胞膜の維持に関わるタンパク質に着目した個別解析を実施した。そのうち、膜修復に関わるMitsugumin53(MG53)が運動後5日目の筋で増加すること、特に筋血管に強く発現することを明らかにした。この結果は、血管修復能の違いが筋の適応に関与する可能性を提案するものであり、更なる検討を加える予定である。さらに、筋細胞におけるMG53の発現および筋線維タイプによる発現パターンの変化についても詳細な解析を進めている。本年度予定していた、筋特異的ないし感覚神経特異的なメカノセンサー欠損マウスで運動後の筋適応現象の有無を調べる計画については、年度途中での筋痛モデル作製装置(モーターと制御装置)の故障により実施できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動前後で発現変化する因子の探索については、発現遺伝子の網羅的解析に着手し、本研究計画の基礎となる情報を得た。また、特定のタンパク質に着目した個別解析では、筋血管の関与の可能性を示唆する予想外の結果を得た。メカノセンサー欠損マウスを用いた研究が計画通りに進まなかったものの、上記の予想外の結果から新たな方向への研究展開が期待でき、研究の進捗状況は概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、DNAマイクロアレイ解析を進めると同時に、網羅的プロテオーム解析を実施し、運動前後で特徴的な増減を示す分子を抽出する。運動後のより詳細な時間的・空間的な発現パターンを解析する。運動後に興味深い挙動を示すことが明らかとなったMG53については、運動後の筋細胞と筋血管における詳細な発現パターンの変化の解析を進める。さらに、遺伝子欠損マウスの入手利用の可能性を検討する。不具合の生じている筋痛モデル作製装置については、修理が困難であるため、代替機器の作製を行う。
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