研究実績の概要 |
代謝反応のリアルタイム計測を目的として近年核偏極磁気共鳴法(特に極低温DNP-MRI)の応用が試みられ、米国では前立腺がんの臨床研究も開始された。本研究では、同手法では分子プローブの核偏極寿命が短く適用困難であった、標的臓器への分布・代謝に一定の時間を要する代謝過程のリアルタイム計測を、我々が高感度化実現した常温DNP-MRI装置を他核種計測可能なシステムへ高度化し、併せて適応可能な分子プローブ展開をすすめることで、代謝イメージングの新たな適用領域を開拓することを目的とする。その実証応用として13C, 15N、31Pなどの生体動態研究への適用実現、がん・炎症代謝異常モデルなどにおいて、酵素活性や糖集積リアルタイム計測を実現し薬効評価への本手法の有用性を実証し、臨床診断機器製作へ向けた技術基盤を構築する。 当該年度は、(1)13C計測用DNP-NMR/MRI計測プローブを設計、製作した。同プローブを用いてスペクトル計測が可能であることを確認した。また、高感度計測を目的として、高精度磁場制御装置を導入した。(2)小型・高感度計測プローブを数点設計・試作した。健常動物と13C尿素をモデル物質とした計測で、計測が可能であることを明らかとした。(3)通常用いている傾斜磁場コイルは1H用に設計されている。13C、15Nなど低磁気回転比核イメージングでは、1Hとの磁気回転比分だけ多くの電流を要するため、大電流用傾斜磁場コイルあるいは排熱手段の付加が必須である。そこで、次段での低磁気回転比核への応用を視野に設計に着手した。
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