本研究では、ソフトな分子間相互作用によって数時間血中を循環しその後速やかに尿中排泄される微細血管造影用高分子MRIプローブを開発し、従来法では可視化できなかった 10 μmの脳微細血管のMRI造影法の構築と、脳卒中の高精度診断を目指して血管構造や側副血行路形成プロセスを単一個体で長期間評価できる基礎 技術の創成に挑む。令和1年度に引き続き、造影剤の自己凝集構造台の評価を実施してきた。分光学的手法によって、フルオレセインの分子間力と自己組織化構造の安定化エネルギーを評価した。その結果、フルオレセインのパイスタッキング相互作用を機動力として、ミセル構造を形成し、そのミセルが4.6オンスストローム間隔で繊維軸に対して76度傾いて積み重なり1000nm程度の繊維構造を形成することを突き止めた。ミセル構造の安定化エネルギーは、パイスタッキングよりもポリエチレングリコールの凝集力が主に関与していることを明らかとした。また、脳血管イメージングにおいては送受信コイルやシーケンス・ 画像解析法の最適化によって、MRI装置の設定解像度と同程度のレゾリューションで、脳内の微細血管を可視化することができた。脳動脈瘤モデルラットを使った実験では、通常のMRAでは可視化されない脳動脈瘤を造影剤投与によって明瞭に可視化できることを確認し、単一個体で複数回の投与し検査しても、脳動脈瘤モデルラットの生存率に大きな影響を与えないことを確認できた。
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