研究課題
末期腎不全の患者に対して行われる腎臓移植は有効な移植医療として定着しつつある。しかしながら、移植後の生着率は未だに低く、移植後には腎臓が機能不全に陥ってしまい、再移植を余儀なくされている。この低い生着率の要因は、移植直後に起きる虚血再灌流障害が大きな原因の一つであることが明らかにされている。主に、移植した腎臓の血管内皮細胞がレシピエントの新鮮血にさらされた際に起きる傷害反応である。この虚血再灌流障害は、様々な生体反応が複雑に関与しており、未だに効果的な薬剤や治療法はない。本研究では、腎臓移植において虚血状態にさらされた血管内皮細胞を、特異的に保護して自然免疫反応による攻撃を防ぐことことができる細胞表面修飾剤の創成を目指す。本年度では、昨年度から引き続き、抗凝固活性のヘパリンの利用を試み、PEG脂質への結合と評価を進めている。ヘパリンは、グリコかリックスの重要な役割を担う分子として知られており、虚血再灌流障害の制御に役立つものと考えているからである。酸性条件処理によりフラグメント化ヘパリンを合成し、リシンの数が1個から8個と異なる長さの合成ペプチドが結合したPEG脂質へ反応させて、アンチトロンビンの結合活性を調べている。リポソームを用いら、抗FXa阻害評価から、いずれのヘパリン脂質でもヘパリン活性が認められることがわかり、脂質部分への導入が可能であることを示された。また、赤血球の表面修飾を検討したところ、蛍光標識したアンチトロンビンの結合が見られたことから、細胞表面へのヘパリン修飾が可能であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
概ね計画通りである。
引き続き、in vitro系の評価を進める。
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