研究課題/領域番号 |
18H03531
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30243041)
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研究分担者 |
樋口 ゆり子 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40402797)
宗 可奈子 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50816684)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 小胞体 / 逆行性輸送 |
研究実績の概要 |
水溶性物質の薬物キャリアとしてブロック共重合体を用いたポリマーソームの調製について検討した。薄膜法では封入効率が悪かったため、w/o/wエマルションを介した調製を行った。mPEG-PCLブロック共重合体を用いた検討の結果、有機溶媒として酢酸エチル、ジクロロメタンを単独で用いた場合とは異なり、両者の1:1混合液を用いた場合には、粒子径が約160nmの単一粒子が得られた。一方、親水・疎水ブロックそれぞれの分子量の異なるmPEG-PCLを用いて薬剤封入効率の検討を行った結果、疎水部の大きいmPEG2k-PCL10kに比べ、mPEG5k-PCL5kやmPEG5k-PCL10kのほうがでは薬剤封入率が高くなった。次に、バシトラシンをモデル薬剤として、ヒアルロン酸修飾ポリマーソームのデリバリー効率の評価を行った。バシトラシンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)阻害剤であり、グラム陽性細菌に対して毒性を示す。真核細胞の小胞体内にもPDIは存在するが、環状中分子ペプチドのバシトラシンは細胞内にほとんど取り込まれないため選択毒性を示す。そこで、バシトラシンを細胞送達キャリアに内封し小胞輸送を促進することで、がん細胞に障害性を示すのではないかと考えた。5microMのバシトラシンや未修飾ポリマーソームへの封入体ではHeLa細胞に対してほとんど毒性を示さないのに対し、ヒアルロン酸修飾ポリマーソームにバシトラシンを封入した場合には顕著な細胞障害性が認められ、予想通りの結果が得られた。本実験結果より、中分子薬物の細胞内送達に本ポリマーソームが有効なツールとなることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リポソームの代わりにポリマーソームを用いることで水溶性薬物やペプチドを安定に封入できることが確認された。これをヒアルロン酸修飾することによって細胞取り込みを促進し、内封した薬剤を小胞体まで送達できることを、蛍光標識モデルペプチドを用いた細胞内動態試験および生理作用を持った薬物の薬理効果の両面から明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでリポソームやポリマーソームなど粒子性キャリアを用いて、内封された中分子薬剤を小胞体に送達することを検討してきた。これらの検討の中で、小胞体移行シグナルを持ったペプチドがより高い小胞体移行性を示すことも明らかにしている。そこで、本アプローチの適用をタンパク質にも拡げ、タンパク質自体に遺伝子工学的に小胞体移行シグナルを導入し、かつ細胞取り込みを促進する化学修飾を施すことによって、小胞体デリバリーの可能性を検討する。
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