研究課題/領域番号 |
18H03531
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30243041)
|
研究分担者 |
樋口 ゆり子 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40402797)
宗 可奈子 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50816684)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 小胞体 / 逆行性輸送 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞外から小胞体へシームレスに薬物をデリバリーする方法論の構築を目的とする。低分子抗体は分子標的薬として有望であるが、細胞にほとんど取り込まれないため細胞内分子をターゲットにできない。そこで、低分子抗体に標的細胞選択的な細胞膜透過および小胞体指向化を達成するための分子修飾を施し、小胞体へ送達する方法を設計した。まず、標的細胞選択的な細胞膜透過を目的に、Eセレクチンに結合するsialyl-Lewis Xの構造単純化糖(sLeX mimic)を低分子抗体に結合する方法を確立した。蛍光タンパク質mKO2の一か所にアジドフェニルアラニン(AzF)を挿入し、アジド基と環状アルキンのクリック反応を利用して、sLeX mimic-DBCOを結合させた。SDS-PAGEの結果、mKO2(AzF)よりも分子量の大きな単一バンドが認められ、さらに、そのバンドにはFAM-DBCO由来の蛍光シグナルが認められず、アジド活性の消失したことから、sLeX mimic-mKO2の生成を確認した。サイトカイン処理によりEセレクチンの発現を誘導したHUVECに対して、mKO2はほとんど取り込まれなかったが、sLeX mimic-mKO2は細胞内へ取り込まれた。また抗Eセレクチン抗体の前処理によりsLeX mimic-mKO2の取り込みが阻害されたことから、Eセレクチンを介した取り込みが示唆された。抗MDM2-scFvについても同様にsLeX mimic修飾により取り込みが増大した。さらに、sLeX mimic-scFvによりp53の活性が増大したことから、scFvが細胞内でp53-MDM2のタンパク質-タンパク質結合を阻害したことからも、sLeX mimic修飾による細胞内送達が強く示唆された。以上、構造単純化sLeXのscFvへの化学修飾は、scFvの細胞膜透過に有効であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は細胞外から小胞体へのシームレスなデリバリーシステムの開発を目的としており、本年度より、低分子抗体の送達方法の開発に着手した。昨年度までに実績のあるsialyl-Lewis Xの構造単純化糖を利用し、低分子抗体に部位特異的に化学修飾することで、第一段階である細胞内への送達に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度低分子抗体の細胞内送達に成功したので、次年度は、KDELペプチドの付加により逆行性輸送経路を介した小胞体へのデリバリーを目指す。
|