TTC39B標的RNA医薬搭載肝特異的バイオナノカプセルによる脂肪肝炎治療薬開発

2018 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18H03532
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 小関 正博 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10467582)
• 研究分担者: 黒田 俊一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60263406)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 核酸医薬 / PCSK9 / バイオナノカプセル

研究実績の概要

RNAiは血中に存在するendonucleaseによる分解により速やかに分解されてしまうため、化学修飾による耐性向上か、ナノキャリア搭載による保護が必要である。今回申請者は、endonuclease耐性が高くなる独自のたんぱく修飾をした核酸作成技術をもつA社と共同研究契約を結び、LDL受容体の発現調節に関与しているPCSK9に対して、マウスのヒトで保存されている配列を選択しRNAiを作成した。Hepa1-6などの細胞株にて、RNAiの配列を選定した。分担研究者の黒田が開発したヒト肝臓特異的DDSナノキャリアであるバイオナノカプセル（Yamada et al. Nature Biotech 2003）に搭載した。バイオナノカプセルはヒト肝臓特異的に感染するB型肝炎ウイルスの表面タンパク質を提示しており、同ウイルス固有の①ヒト免疫系からの回避能、②高効率かつ高特異性のヒト肝臓細胞感染能、③ヒト肝臓細胞内におけるエンドソーム脱出能を有している。培養細胞株でPCSK9 mRNA抑制効果を検討したが、十分なPCSK9抑制効果が得られなかったので、A社作成のRNAiとバイオナノカプセルの相性（電荷、疎水性など）がよくなく、十分RNAiが格納されていない可能性が考えられた。そこで、別の性質を持つナノカプセルB、ナノカプセルCを作成し、A社のRNAiを搭載した核酸を作成した。一定の効果が得られたことを確認したのち、LDL受容体ヘテロマウスにwestern dietを2週間給餌して血清LDL-C値を高くしたのちに、ナノカプセルCに搭載した抗PCSK9-RNAiを投与する郡、PBSを投与する郡で計10匹に尾注し、血清LDL-C、肝PSCK9 mRNA(qPCR法)を評価した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

RNAiは血中に存在するendonucleaseによる分解により速やかに分解されてしまうため、化学修飾による耐性向上か、ナノキャリア搭載による保護が必要である。今回申請者は、endonuclease耐性が高くなる独自のたんぱく修飾をした核酸作成技術をもつA社と共同研究契約を結び、LDL受容体の発現調節に関与しているPCSK9に対して、マウスのヒトで保存されている配列を選択しRNAiを作成した。Hepa1-6細胞株にて、RNAiの配列を選定した。分担研究者の黒田が開発したヒト肝臓特異的DDSナノキャリアであるバイオナノカプセル（Yamada et al. Nature Biotech 2003）に搭載した。培養細胞株でPCSK9 mRNA抑制効果を検討したが、十分なPCSK9抑制効果が得られなかったので、A社作成のRNAiとバイオナノカプセルの相性（電荷、疎水性など）がよくなく、十分RNAiが格納されていない可能性が考えられた。そこで、別の性質を持つナノカプセルB、ナノカプセルCを作成し、A社のRNAiを搭載した核酸を作成した。
一定の効果が得られたことを確認したのち、LDL受容体ヘテロマウスにwestern dietを2週間給餌して血清LDL-C値を高くしたのちに、ナノカプセルCに搭載した抗PCSK9-RNAiを投与する郡、PBSを投与する郡で計10匹に尾注し、血清LDL-C、肝PSCK9 mRNA(qPCR法)を評価することができた。
また脂肪肝炎の評価のために、これまでの高脂肪高シュクロース胆汁酸含有食を改変し新規食事誘導性脂肪肝炎マウスモデルを作成した。

今後の研究の推進方策

LDL受容体ヘテロマウスにwestern dietを2週間給餌して血清LDL-C値を高くしたのちに、ナノカプセルCに搭載した抗PCSK9-RNAiを投与する郡、PBSを投与する郡で計10匹に尾注し、血清LDL-C、肝PSCK9 mRNA(qPCR法)を評価することができたが、予想していたより個体間のLDL-C値のバラツキが大きく、評価が難しかった。このため、当面はC57Bl/6マウスを導入し、ナノカプセルCに搭載した抗PCSK9-RNAiを投与する群、ナノカプセルCのみを投与する群、RNAiのみを投与する群で、効果の評価をすることとした。
脂肪肝炎の評価のために、これまでの高脂肪高シュクロース胆汁酸含有食を改変し新規食事誘導性脂肪肝炎マウスモデルを作成したので、PCSK9のRNAiで一定の成果が出た場合には、TTC39Bに対するRNAi搭載ナノカプセルについても、C57Bl/6マウスに投与する実験を予定としている。

研究成果

• [雑誌論文] Statement for Appropriate Clinical Use of PCSK9 Inhibitors (2018)
  • 著者名/発表者名: Atsushi Nohara, Hirotoshi Ohmura, Hiroaki Okazaki, Masatsune Ogura, Kazuo Kitagawa, Masahiro Koseki, Kayoko Sato, Kazuhisa Tsukamoto, Shizuya Yamashita, On behalf of the Japan Atherosclerosis Society Working Group on Statement for Appropriate Use of PCSK9 Inhibitors
  • 雑誌名: Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 巻: 25 ページ: 747-750
  • DOI: 10.1016/j.jacl.2018.06.010.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Accelerated Atherogenicity in Tangier Disease. (2018)
  • 著者名/発表者名: Jun Muratsu, Masahiro Koseki, Daisaku Masuda, Yuji Yasuga, Satoki Tomoyama, Keiji Ataka, Yoshiki Yagi, Atsushi Nakagawa, Hidehumi Hamada, Shigeki Fujita, Hiroaki Hattori, Tohru Ohama, Makoto Nishida, Hisatoyo Hiraoka, Yuji Matsuzawa, Shizuya Yamashita
  • 雑誌名: Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 巻: 25 ページ: 286-298
  • DOI: 10.5551/jat.43257
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A Novel Selective PPARα Modulator (SPPARMα), K-877 (Pemafibrate), Attenuates Postprandial Hypertriglyceridemia in Mice (2018)
  • 著者名/発表者名: Sairyo Masami、Kobayashi Takuya、Masuda Daisaku、Kanno Koutaro、Zhu Yinghong、Okada Takeshi、Koseki Masahiro、Ohama Tohru、Nishida Makoto、Sakata Yasushi、Yamashita Shizuya
  • 雑誌名: Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 巻: 25 ページ: 142-152
  • DOI: 10.5551/jat.39693
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] オキシステロールと動脈硬化 (2018)
  • 著者名/発表者名: 小関正博
  • 雑誌名: Heart View 巻: 22 ページ: 65-70
• [雑誌論文] 小腸におけるコレステロール吸収と動脈硬化 (2018)
  • 著者名/発表者名: 小関正博
  • 雑誌名: Pharma Medica 巻: 36 ページ: 57-60
• [学会発表] Oxidized cholesterol, 7-ketocholesterol, is an Important Risk Factor for the Development of Atherosclerosis (2019)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Koseki
  • 学会等名: 第83回日本循環器学会学術集会
• [学会発表] Establishment of an Enzyme-Linked Immunosorbent Assay for Oxidized High Density Lipoprotein and Its Clinical Significance for Cardiovascular Risk Assessment (2019)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Okada, Tohru Ohama, Mitsuyo Okazaki, Hiroyasu Inui, Kotaro Kanno, Hibiki Matsuda, Yinghong Zhu, Daisaku Masuda, Masahiro Koseki, Makoto Nishida, Yasushi Sakata, Shizuya Yamashita
  • 学会等名: 第83回日本循環器学会学術集会
• [学会発表] Lipoprotein Particle Number Analysis of Detailed Subclasses by Gel Permeation HPLC (2018)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Okada, Tohru Ohama, Hiroyasu Inui, Kotaro Kanno, Hibiki Matsuda, Yinghong Zhu, Daisaku Masuda, Masahiro Koseki, Makoto Nishida, Yasushi Sakata, Shizuya Yamashita
  • 学会等名: Gordon Research Conference 2018 Lipoprotein Metabolism
  • 国際学会
• [学会発表] Atherogenicity in Tangier Disease - Literature-based Analysis and A Case Report- (2018)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Koseki, Shizuya Yamashita,Yasushi Sakata
  • 学会等名: Gordon Research Conference 2018 Lipoprotein Metabolism
  • 国際学会
• [学会発表] Adipose Tissue-derived Cell Transplantation In A Homozygous Familial Hypercholesterolemia Patient (2018)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Koseki, Ayami Saga, Takeshi Okada, Kotaro Kanno, Masumi Asaji, Kouichi Tomita, Keigo Osuga, Sachiko Ezoe, Makoto Nishida, Yasushi Sakata, Shizuya Yamashita
  • 学会等名: American Heart Association Annual Meeting 2018
  • 国際学会
• [学会発表] The Molecular Mechanism Underlying both Atherosclerosis and Non-alcoholic Steatohepatitis (2018)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Koseki, Shizuya Yamashita,Yasushi Sakata
  • 学会等名: 第66回日本心臓病学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸管上皮細胞のコレステロールトランスポータ―NPC1L1と核内受容体LXRを識る (2018)
  • 著者名/発表者名: 小関正博、嵯峨礼美、冠野昂太郎、岡田健志、大濱透、西田誠、山下静也、坂田泰史
  • 学会等名: 第50回日本動脈硬化学会総会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 家族性高コレステロール血症ホモ接合体に対する同種脂肪組織由来幹細胞移植療法の開発の現状 (2018)
  • 著者名/発表者名: 小関正博、嵯峨礼美、冠野昂太郎、岡田健志、朝治真澄、冨田興一、大須賀慶悟、江副幸子、西田誠、坂田泰史、山下静也
  • 学会等名: 第50回日本動脈硬化学会総会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] NAFLD/NASHと動脈硬化症をつなぐ分子メカニズムは何か (2018)
  • 著者名/発表者名: 小関正博、嵯峨礼美、冠野昂太郎、岡田健志、山下静也、坂田泰史
  • 学会等名: 第50回日本動脈硬化学会総会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] LXRalphaの新規調節機構：TTC39B阻害はLXRalphaのユビキチン化によるプロテアソーム分解を減弱させアテローム性動脈硬化症および非アルコール性脂肪性肝炎の両方を改善する (2018)
  • 著者名/発表者名: 小関正博、山下静也、坂田泰史
  • 学会等名: 第55回日本臨床分子医学会学術集会
• [学会発表] Lipoprotein Particle Number Analysis of Detailed Subclasses by Gel Permeation HPLC (2018)
  • 著者名/発表者名: Takeshi Okada, Tohru Ohama, Mitsuyo Okazaki, Hiroyasu Inui, Kotaro Kanno, Hibiki Matsuda, Yinghong Zhu, Daisaku Masuda, Masahiro Koseki, Makoto Nishida, Yasushi Sakata, Shizuya Yamashita
  • 学会等名: 第66回日本心臓病学会学術集会
• [学会発表] 重症家族性高コレステロール血症に対する再生医療の臨床応用 (2018)
  • 著者名/発表者名: 冠野昂太郎、小関正博、嵯峨礼美、岡田 健志、朝治真澄、冨田興一、大須賀慶悟、江副幸子、西田誠、坂田泰史、山下 静也
  • 学会等名: 第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会
• [学会発表] Accelerated Systematic Atherogenicity in Tangier Disease -Review and Case Report- (2018)
  • 著者名/発表者名: Jun Muratsu, Masahiro Koseki, Daisaku Masuda, Yuji Yasuga, Satoki Tomoyama, Keiji Ataka, Yoshiki Yagi, Atsushi Nakagawa, Hidehumi Hamada, Shigeki Fujita, Tohru Ohama, Makoto Nishida, Hisatoyo Hiraoka, Yuji Matsuzawa, Shizuya Yamashita
  • 学会等名: 第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会
• [学会発表] 冠動脈硬化と頸動脈分岐部狭窄を来した弾性繊維性仮性黄色腫の1例 (2018)
  • 著者名/発表者名: 冠野昂太郎、小関正博、乾洋勉、松田 響、西良雅己、岡田健志、増田大作、 大濱透、西田誠、室田浩之、山下静也
  • 学会等名: 第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会