研究課題/領域番号 |
18H03533
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
安原 主馬 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90545716)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗菌剤 / 脂質膜 / 両親媒性分子 / 大環状分子 / ペプチドミメティクス |
研究実績の概要 |
本研究では、細菌の細胞膜を選択的に認識し、膜構造を破壊することで作用する新しい膜活性抗菌剤の開発を行うことを目的とする。多くの生物は、細菌の細胞膜を攻撃することで作用する抗菌性ペプチドを先天的に有しており、多様な細菌に有効かつ薬剤耐性を誘導しないことが知られている。本研究では、抗菌ペプチドの構造をヒントに、よりシンプルな分子骨格を用いた抗菌剤のミニマル・デザインを行うことで、膜活性抗菌剤に求められる本質的な設計指針を明らかにする。抗菌剤の分子ライブラリを構築し、生物活性(抗菌・毒性)および作用機構の評価にもとづいた構造最適化を行うことで、薬剤耐性を誘導しない次世代型の抗菌性分子を実現する。本年度は、前年度に合成を行った大環状分子を骨格とした抗菌剤ライブラリの生物活性評価およびスクリーニングを行った。具体的には、大腸菌(E. coli ATCC25922)およびを黄色ブドウ球菌(S. aureus ATCC25923)を対象として最小発育阻害濃度(MIC)の測定を行った。また、すぐれた抗菌活性を示した化合物を対象として、大腸菌を対象とした薬剤耐性の獲得試験を行い、期待したとおり複数回の繰り返し培養においても薬剤耐性を示さないことを明らかにした。また、毒性試験として赤血球および培養細胞(HeLa)を対象とした毒性試験を実施した。これら生物活性試験の結果より、高抗菌活性かつ低毒性を示す抗菌剤の分子構造における特徴を明らかにした。加えて、モデル膜としてリン脂質によって形成したリポソームもしくは平面二分子膜を用いて、作用機構に関する検討についても開始した。その結果、細菌類に対する抗菌活性と脂質膜の破壊活性には良い相関が見られ、当初の期待通り細胞膜を作用対象とした抗菌剤の設計指針が明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り、抗菌剤のライブラリ評価が完了し、最適化に向けた分子設計指針が明らかになった。また、モデル系を用いたメカニズム解析も基礎的知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画に大きな変更は無く、次年度は、より抗菌活性と生体毒性のバランスを最適化した分子の設計と合成に取り組む。また、モデル膜を利用したメカニズム解析にも重点を置いて研究を進める。
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