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2020 年度 実績報告書

分子集合体型薬物ナノカプセルの内部物性制御に基づく体内動態制御

研究課題

研究課題/領域番号 18H03534
研究機関九州大学

研究代表者

岸村 顕広  九州大学, 工学研究院, 准教授 (70422326)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード薬物送達システム / ベシクル / 薬物動態 / 物性制御 / 粘膜バリア
研究実績の概要

本研究では、3つの研究項目として、①内部物性を系統的に制御したベシクルの調製と物性評価、②血中投与後の体内動態評価、③粘膜組織での動態評価、を設定し、目標の達成を狙っている。前年度の研究項目①の成果を生かしポリイオンコンプレックス(PIC)ベシクルPICsomeにシリカハイブリッドし、安定性や体内動態を評価した。PICsome作製後に適度な架橋を施した後、シリカハイブリッドを行った場合にシリカ処理なしの場合に比べて顕著な血中循環能の改善が見られた。
次に、従来型のPICsomeに対して動的な刺激を与えての物性評価を行った。特に、手軽に多検体の実験が可能な方法の確立を目指し、渦流撹拌下での評価、および、粘度を高めた条件での評価を行検討した。その結果、渦流撹拌下での評価において、架橋度と粘性抵抗に対する安定性に顕著な相関があることが見いだされ、評価法として有用であることが明らかとなった。
次に、タンパク質濃縮コア(yolk)を有するPICベシクルのyolk-shell構造体のタンパク質適用範囲や形成メカニズムについて調査を行った。その結果、アニオン性の高いタンパク質については広い適用範囲を持つことが明らかとなった。さらに、サイズ調整に取り組み、ベシクル(shell)粒径について300-500 nmの範囲で、yolk粒径については100-200 nmの範囲でチューニングできたものの、血中投与に適した200 nm以下のサイズのものを得ることはできなかった。その過程で制御原理について明らかにでき、作製時に用いる余剰のポリカチオンとタンパク質の集合相とベシクル相の相分離が鍵であり、また外側から内側へタンパク質を輸送・濃縮するメカニズムが存在することを明らかとした。
研究項目③については、スルホベタインポリマーが腸管上皮細胞層のin vitroモデルにおいて透過が起こることを見出し、新たな手法となりうることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

3つの研究項目の中で、研究項目①については、シリカハイブリッド法やyolk-shell法などの新たな手法を用いてのキャリア物性制御の系統的手法を明らかにしており、十分な成果が得られといえる。一方、研究項目②については、中途までは成果が得られたが、新型コロナウイルス感染症の影響で仕事を引き継ぐ予定をしていた留学生が入国できなくなり、また2022年4月現在も入国できていない状況であるため、進捗は遅れざるを得なくなった。研究項目③については、学会発表につながる成果は挙げており、概ね予定どおりといえる。

今後の研究の推進方策

今回見いだされた動的条件下でのPICsome安定性評価法をさらに発展させ、より血流モデルとして有効な手法の開発を行う。また、シリカハイブリッドやyolk-shell構造体を活用した生物評価についても進め、これらを総合的に活用しての血中動態評価を行う。さらにスルホベタインポリマーを活用した経粘膜投与法の開発を検討する。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Inducible Dynamic Behavior of Polyion Complex Vesicles by Disrupting Charge Balance2021

    • 著者名/発表者名
      Liu Yiwei、Maruyama Tomoki、KC Biplab、Mori Takeshi、Katayama Yoshiki、Kishimura Akihiro
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 50 ページ: 1034~1037

    • DOI

      10.1246/cl.210037

    • 査読あり
  • [雑誌論文] コロイドナノ材料を組み込むプラットフォームとしてのポリイオンコンプレックスナノ構造体~コアセルベートを中心に2021

    • 著者名/発表者名
      岸村顕広
    • 雑誌名

      Colloid & Interface Communication

      巻: 46 ページ: 26-29

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Noncovalent Stabilization of Vesicular Polyion Complexes with Chemically Modified/Single-Stranded Oligonucleotides and PEG-b-guanidinylated Polypeptides for Intracavity Encapsulation of Effector Enzymes Aimed at Cooperative Gene Knockdown2020

    • 著者名/発表者名
      Kim Beob Soo、Naito Mitsuru、Chaya Hiroyuki、Hori Mao、Hayashi Kotaro、Min Hyun Su、Yi Yu、Kim Hyun Jin、Nagata Tetsuya、Anraku Yasutaka、Kishimura Akihiro、Kataoka Kazunori、Miyata Kanjiro
    • 雑誌名

      Biomacromolecules

      巻: 21 ページ: 4365~4376

    • DOI

      10.1021/acs.biomac.0c01192

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photo-reactive oligodeoxynucleotide-embedded nanovesicles (PROsomes) with switchable stability for efficient cellular uptake and gene knockdown2020

    • 著者名/発表者名
      Kim Beob Soo、Naito Mitsuru、Kamegawa Rimpei、Kim Hyun Jin、Iizuka Ryo、Funatsu Takashi、Ueno Shingo、Ichiki Takanori、Kishimura Akihiro、Miyata Kanjiro
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 56 ページ: 9477~9480

    • DOI

      10.1039/d0cc01750g

  • [学会発表] ポリイオンコンプレックス形成に基づくタンパク質内包自己組織化Yolk-shell構造体のサイズ制御2020

    • 著者名/発表者名
      丸山朋輝、劉一イ、森健、片山佳樹、岸村顕広
    • 学会等名
      第69回高分子学会年次大会
  • [学会発表] Osmotic Pressure-induced Multilamellar Structure Formation Based On Protein-Encapsulated Yolk-shell Structure2020

    • 著者名/発表者名
      丸山朋輝、劉一イ、森健、片山佳樹、岸村顕広
    • 学会等名
      第20回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] ユニークなタンパク質カプセル化手法としてのPIC yolk-shell構造体の開発2020

    • 著者名/発表者名
      岸村 顕広、劉 一イ、丸山 朋輝、森 健、片山 佳樹
    • 学会等名
      第36回日本DDS学会学術集会
  • [学会発表] 経粘膜薬物送達に向けたスルホベタインポリマーの浸透能力評価2020

    • 著者名/発表者名
      Fadlina Aulia、森本 展行、山本 雅哉、森 健、片山 佳樹、岸村 顕広
    • 学会等名
      第36回日本DDS学会学術集会
  • [学会発表] ベシクル型コンパートメント内へのタンパク質集積に基づくyolk-shell型構造体の形成2020

    • 著者名/発表者名
      岸村顕広、劉一イ、丸山朋輝、神澤大志、森健、片山佳樹
    • 学会等名
      第14回バイオ関連化学シンポジウム2020
  • [学会発表] タンパク質内包自己組織化Yolk-shell型構造体の多重膜化2020

    • 著者名/発表者名
      丸山 朋輝、劉 一イ、森 健、片山 佳樹、岸村 顕広
    • 学会等名
      第14回バイオ関連化学シンポジウム2020
  • [学会発表] 浸透圧ショックにより誘起されるポリイオンコンプレックスベシクルの多重膜化2020

    • 著者名/発表者名
      丸山 朋輝、劉 一イ、森 健、片山 佳樹、岸村 顕広
    • 学会等名
      第69回高分子討論会
  • [学会発表] 浸透圧ショックによる多重膜ポリイオンコンプレックスベシクルの形成2020

    • 著者名/発表者名
      丸山朋輝、劉一イ、森健、片山佳樹、岸村顕広
    • 学会等名
      2020年日本化学会九州支部秋期研究発表会
  • [学会発表] Development of novel polyioncomplex systems for protein delivery and encapsulation2020

    • 著者名/発表者名
      岸村 顕広
    • 学会等名
      VANJ Conference 2020
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 一重膜ポリイオンコンプレックスベシクルの多重膜構造への変形2020

    • 著者名/発表者名
      丸山 朋輝、劉 一イ、森 健、片山 佳樹、岸村 顕広
    • 学会等名
      第30回日本MRS年次大会
  • [学会発表] ポリイオンコンプレックスベシクルの多重膜化とその形成挙動の解析2020

    • 著者名/発表者名
      丸山朋輝・劉一イ・森健・片山佳樹・岸村顕広
    • 学会等名
      令和二年度九州地区高分子若手研究会・冬の講演会
  • [学会発表] 分子濃縮系としての生命現象を扱う分子集合体科学への挑戦2020

    • 著者名/発表者名
      岸村 顕広
    • 学会等名
      第30回格子欠陥フォーラム
  • [図書] 相分離生物学の全貌(現代化学増刊46)2020

    • 著者名/発表者名
      白木 賢太郎、ほか109名
    • 総ページ数
      416
    • 出版者
      東京化学同人
    • ISBN
      978-4-8079-1346-6

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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